Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
○放射線照射した哺乳動物細胞にビタミンC等を添加すると、細胞死や染色体異常頻度は変わらないものの、突然変異頻度は有意に下がる。当研究室では照射細胞中にシステイン酸化型長寿命ラジカルがあることを見つけ、このラジカルがビタミンC等を加えると消去することから、この長寿命ラジカルが突然変異誘発の鍵を握っていると考えてきた。本研究は、そのラジカルの生成箇所および生成機構の解明を目的とした。○未照射のSHE細胞中には、ミトコンドリア中のフラビンモノヌクレオチドのセミキノンラジカルとチイルラジカルのあることが、本研究で初めてわかった。従来、共同研究者から提供されていた冷凍細胞ではこれらのラジカルは消失して観測できなかった。○未照射細胞中のセミキノンラジカル及びチイルラジカルは、1つの細胞あたりそれぞれ2.5x10^6,7.5x10^5spinsと定量測定に成功した。○SHE細胞をγ線照射すると、チイルラジカルが減少し、フェニルアラニンラジカルが生成する。フェニルアラニンラジカルの生成量は、1000Gy照射時に2.0×10^6spins/cellであった。○突然変異誘発に関与するとされてきたシステインの酸化型ラジカルは、培養直後のシリアンゴールデンハムスター胎児(SHE)細胞を照射しても生成しなかった。従来、共同研究者から提供されていた冷凍細胞は長時間凍結保存されていたため、徐々に細胞内の溶存酸素濃度が高くなり、その条件下でのみシステイン酸化型ラジカルが生成したと推察される。本研究で生物影響実験とラジカル測定実験の試料の状態を極めて等しくした結果、このラジカルが突然変異誘発に関与していることは疑わしくなった。一方で、ミトコンドリア中のセミキノンラジカルやチイルラジカルが細胞の恒常性・酸化レベルと関与していることが示唆され、遺伝的不安定性を含めた遅延放射線生物影響とこれらのラジカルの対応関係が本研究の今後の展開するうえで重要な鍵になる。
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