Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
放射線分解反応初期過程の解明を目的とする、ポンプ&プローブ方式による超高時間分解能パルスラジオリシス装置の開発と応用を進めた。レーザーフォトカソードRF電子銃を含む18MeV電子線型加速器で発生させた極短電子パルス(ポンプ)で瞬間的に放射線反応を開始し、これと高精度に同期されたTi : Sapphireフェムト秒レーザをプローブ光に用いた吸収分光測定によりダイナミクスを追跡する。装置の開発では、類似のプロジェクトが世界各国でも進められているものの装置の応用まで十分に手が回っていない中、本装置ではこれらの問題を大幅に改善したため(1.5時間の電荷安定性4%、同期精度600fs)、パルスラジオリシス時間分解能もサブ5psを達成し、応用段階にも入った。更に、科学研究補助金にて購入させて頂いた光パラメトリック増幅器を用いて、プローブ光波長を533-2600nmまで拡大できたため、以下の応用研究も行うことができた。これまで純水を中心に放射線分解反応を研究してきたが、極性溶媒全体における放射線化学反応の特徴を明らかにするため(水は極性溶媒の一種にすぎないため)に、水と構造の似た各種アルコールを用い、誘電率や粘度等の異なる溶媒中での溶媒和電子の振る舞いを調べた。メタノール〜デカノール(1価アルコール)では、側鎖が長いほど溶媒和電子の初期収量が低下したことから、極性低下に伴うジェミネート再結合の増大を反映すると考えられた。次に、OH基濃度の高い多価アルコールでは、溶媒和"前"電子(pre-solvated electron)の吸収帯である近赤外領域の光吸収が極端に少ないにもかかわらず高い収量を示すことから、イオン化で生成したフリー電子が、高い確率で直接溶媒和に至ることを明らかにした。これは、従来考えられてきた溶媒和過程の描像(フリー電子が溶媒和前電子を経て溶媒和に至る)とは異なるものであった。
All 2006 2005
All Journal Article (3 results) Book (2 results)
Radiation Physics and Chemistry 72
Pages: 169-172
Research on Chemical Intermediates 31
Pages: 261-272