Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
興奮性神経細胞におけるスパイン構造の変化は脳機能および可塑性の変化を随伴しており、神経細胞の持つ生理機能と深い関連性があると信じられている。では、スパインを適切な構造に誘導すれば適切な機能が生まれるのだろうか?現段階では、これらスパイン構造の変化が果たしてその後の神経細胞の生理的特性に必要なものなのか、あるいは単なる副次的産物であるのか、スパイン構造変化の意義については明らかではない。そこで、その解明にむけて、神経細胞のあらゆる発達段階でスパイン構造を人的に操作する(例えばスパインの数を増やす、あるいは形態を幼弱化させる)ことにより、細胞の生理機能がどのように変化するのか解析を行った。まず、スパインのモルフォーゲンであるHomer(スパインの数を増やす)およびHomer変異体(形態を幼弱化させスパインの数を減らす)遺伝子を神経毒性の低いアデノウイルスベクターに組み入れ、様々な発達段階の初代培養ラット海馬神経細胞へ導入した。様々な発達段階は、神経突起が伸展している最中の培養1週目頃、まだスパイン構造が未成熟であり糸状突起の段階にある培養2週目頃、スパイン構造がほぼ完成する臨界期にある培養3週目頃、完全に成熟したスパインを持つ培養4週目頃、そしてスパインの数が減りはじめる培養5週目頃、の5段階である。いずれも、成熟期から老化期まで培養し続け、まずスパイン構造の評価を行った。その評価とは、DiI染色によるスパインの幅、長さ、そして数の測定と、免疫染色によるスパインに局在する分子群(NMDA受容体やAMPA受容体などのグルタミン酸受容体、PSD95やShankなどのアダプター分子、アクチンやドレブリンなどの細胞骨格因子、N-カドヘリンやEphrinなどの細胞接着因子)の集積度合いの評価である。これらの複合的なパラメータ評価を現在統計解析中である。