Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究期間において、当初の最大目標には達しなかったが、以下の研究成果を挙げることができた。1.光線照射の排尿機能に及ぼす影響に関する研究では、正常ラットの排尿機能において、低反応レベルの半導体レーザー光線を下部尿路支配の末梢神経系の通る両側のL5/6椎間孔に照射した場合、照射量・時間依存性に排尿反射の抑制や排尿間隔の延長(膀胱容量の増大)をきたすことを明らかにした。一方で排出時の膀胱内圧には変化をきたさないことを明らかにした。すなわち光線照射は、正常の排尿機能の排出機能には影響を与えず、蓄尿機能のみを増強しうることを証明した。またこの効果は露出した椎間孔への直接照射のほか、経皮的に照射した場合にも認められることを明らかにした。2.光線照射の排尿障害に対する効果に関する研究では、膀胱炎や神経疾患、特に脊髄損傷やパーキンソン病モデルラットの排尿障害において、光線を両L5/6椎間孔に照射した場合、健常モデルの場合と同様の結果が生じることを明らかにした。すなわち光線照射は、炎症性および神経因性の排尿障害において、排出機能を損なうことなく、蓄尿機能の障害を改善しうることを明らかにした。3.光線照射の機序に関する研究では、1、2の結果に加え、下部尿路支配神経系の求心路の脊髄入力部位において、膀胱の感覚刺激で発現するc-Fos蛋白が照射郡では非照射郡に比べ有意に減少していることを示し、上記の機序は膀胱支配神経系の求心路の特異的な抑制によることを明らかにした。4.光線照射の安全性に関する研究では、露出したL6神経根と坐骨神経に光線を過剰照射するも形態学的(光顕レベル)には変化を生じなかったことを示し、光線療法の安全性を確認した。5.これらの研究から、下部尿路支配神経系の通る両側の椎間孔への経皮的な光線照射は、蓄尿障害の通常の治療法のひとつとして、また従来治療に難渋していた各種症例(蓄尿障害に対して治療薬を使用できない症例や薬物治療抵抗性の症例および蓄尿と排出の障害を同時にきたしている症例など)の治療オプションとして臨床的に応用可能であることを示すことができた。