Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
研究最終年度は、まず、ナノ量子細線における振動モードの基本方程式を導出する際、これまで用いてきたベルヌーイ・オイラー(B-E)近似をさらに拡張したティモシェンコ・モデルを用いての計算を実施した。ティモシェンコ・モデルとは、B-E近似で無視していた剪断応力および回転慣性の効果を取り入れて、B-E近似で生じる位相速度の発散の問題を取り除いたモデルである。このモデルを用いることで、比較的振動数の大きい領域までの透過率の計算が可能になったが、高温領域における熱伝導率の量子化の破綻が現れる領域まで計算することはできなかった。そこで、さらに近似の精度をあげ、量子細線の熱伝導方向に垂直な1つの長さが他の長さに対して極めて小さいと仮定(量子極限近似)した2次元空間での量子細線における弾性体の運動方程式を解くことによって、透過率および熱伝導度の計算を試みた。高温領域までの計算は可能になったが、細線の形状を変化させた(細線と熱浴との結合部分の角を丸める等)場合、量子化の振る舞いにそれ程の変化は現れなかった。また、熱伝導度の量子化を破綻させると考えられる不純物による雑音についての解析を行った。不純物の寄与は、2準位状態モデルを用いて記述した(スピン熱浴モデル)。簡単のため、均一な形状をした量子細線における弾性波の固有振動モード(たわみモード)を用いて、第二量子化形式に焼き直し、密度行列を支配するマスター方程式を導出した。マスター方程式は、不純物の相互作用ポテンシャルに対して2次摂動までの近似を行った。しかし、導出したマスター方程式の係数に、時間に陽に依存する振動項が生じた。時間に陽に依存する項を取り除いた場合、それらの係数の間の関係に揺動散逸定理が成り立ち、物理的に正しい結果を与えた。これは、その時間に依存する項に対して高次の摂動を取り入れない限り正しい結果が得られないことを示唆した。
All 2005 2004
All Journal Article (3 results)
Phys.Rev.B 71
Pages: 205308-205308
Phys.Rev.B (in press)
Phys.stat.sol.(c) 1
Pages: 2625-2628