Project/Area Number |
16720037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Japanese literature
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Research Institution | Konan University (2005) Hokkaido University (2004) |
Principal Investigator |
廣川 晶輝 甲南大学, 文学部, 助教授 (40312326)
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Project Period (FY) |
2004 – 2005
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2005)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2005: ¥100,000 (Direct Cost: ¥100,000)
Fiscal Year 2004: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | 万葉集 / 日本上代文学 / 大伴家持 / 防人歌 / 話者 / 発話 / 漢籍受容 |
Research Abstract |
廣川晶輝単著『万葉歌人大伴家持-作品とその方法-』(2003年5月、北海道大学図書刊行会)上梓の過程で浮上した問題意識および研究課題、「大伴家持は防人に同情して長歌作品を三部制作したが、どのようにして第三者たる防人の心情に立ち得たのか、そしてその悲哀をどのような作歌方法を用いて歌に表わし得たのか」、これに基づいて当研究課題では、家持の作歌システム・作歌方法に迫り、研究を進めて来た。その成果をまとめたのが、全国誌『国文学 解釈と教材の研究』(平成16年7月号、学燈社)誌上の「大伴家持論-防人同情歌群をめぐって-」である。この論考においては、 第一作品の<話者>=第三者の立場/第二・第三作品の<話者>=当事者の立場 という「展開」があること等を析出しておいたが、今年度は、「平成16年度研究計画調書」「平成17年度科学研究費補助金交付申請書」に明記しておいたとおり、この「展開」を保証するものとして第二作品の題詞「偽_二防人情_一陳_レ思作歌」があることを確かめたうえで、この題詞のうちの「偽」についての調査を進めた。漢籍に精通する大伴家持であるだけに、調査においては、漢籍の精密かつ広汎な調査が必要であった。その成果は、「第十九回 萬葉語学文学研究会」(2005年11月26日、於 大阪市立大学)において、「大伴家持の防人同情長歌作品について」と題する研究発表において結実している。その成果は、以下のとおりである。 ○<他者>の立場に立つ漢詩文において、「為(爲)」は、<他者>である或る人物の立場に立っての作品であることを明示する機能を果たしている。 ○「為(爲)」によって、それが或る人物の立場に立っての作品であることが表明されている作品には、「表」「書」「檄」といった実用的なものも多いが、或る人物の立場に立ってその心情を描き出すことを志向するものも数多く存在する。 ○漢詩文に対してのこうした素養に裏付けられて、当該の家持長歌作品では、「為(爲)」が用いられ、防人の立場に立つことができた。そして、その防人の心情を描き出し得ている。 科学研究費補助金を交付していただいた2年間において、「<他者>といかに向き合うか」という大きな命題とも向き合い、当研究課題を、古代日本精神史の把握の一助とできたと考えている。
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