近代日本における国制知の形成と展開に関する比較史的研究
Project/Area Number |
16720154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Japanese history
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
瀧井 一博 兵庫県立大学, 経営学部・助教授, 教授 (80273514)
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Project Period (FY) |
2004 – 2006
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2006)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2006: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 国制知 / アルトホフ / 渡辺洪基 / 国家学会 / 伊藤博文 / 立憲国家 |
Research Abstract |
本年度では引き続き帝国大学初代総長渡辺洪基の生涯と事績に注目し、その活動がまさに明治期のわが国の「国制知」を実践するものだったことの論証に努めた。渡辺は生前、「三十六会長」の異名をとり、学術行政に辣腕を振るった。本研究ではそのような渡辺の姿を、第二帝政期ドイツの文部官僚フリードリヒ・アルフトホフと比較して論じた。渡辺はアルフトホフとの間には近代国家の興隆と知の振興とは不可分であるとの認識から、各種の知の組織化を図ったという共通項がある。他方で、渡辺はアルトホフとは異なり、科学技術の高度化に伴なってドイツの学術体制を研究重視の方向へ導いていくという政治的手腕も時代の先と読み取る思想性もなかった。渡辺はむしろ実学の理念立脚して、知識による国民各層の啓蒙とそれを通じての社会的モビリティーの拡充を意図していたのである。その意味で渡辺はあくまで知の媒介者だったのである。渡辺の限界は媒介者としての限界である。彼の作った組織は、知の専門分化の趨勢に抗えず、漸次先細りしていった。その理由は、渡辺がアルトホフとは異なり、啓蒙主義的な結社の理念をあまりに強く引きずっていたからと考えられる。もっとも、渡辺組織化の論理には別様の評価も可能である。かねて筆者は「国制知」という国制分析の四角を転唱してきた。これは国家の統治が有効に作用するためには、それを支える知の制度-理論と人の再生産機構-が不可欠との認識から提起したものであるが、アルトホフ渡辺はそれぞれこの「国制知」の重要な側面を体現していると思われる。アルトホフ体制が「国が制する知」を指し示しているのに対して、官民を縦断する知の制度・あり方を構築しようとした渡辺の思想と活動は「国を制する知」の可能性を暗示しているともいえる。この二つの側面の循環作用を把握考ることにより、constitutionの動態的な理解を獲得することが期待される。
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Report
(3 results)
Research Products
(3 results)