Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究の目的は朝鮮半島の植民地化過程において、朝鮮をめぐる国際分業のあり方がどのように再編されたのかを、山東省出身者を中心とする中国人の広域的な移動・商業活動から照射することである。本年度は特に、朝鮮側の制度的条件と中国人商人との関係を重点的に検討した。19世紀末から中国人商人の商業ネットワークは東北アジアにも広く及ぶようになったが、その様態は受入れ社会の条件に対応して異なっていた。朝鮮の場合について本研究を通じて明らかになった知見を、本年度の発表成果に基づいて述べる(本報告書11参照)。1.植民地化過程での制度変化の例として、保護国期の金融・通貨制度の改革を取り上げた。保護国化前には、全国の通貨流通を一元的に制御する仕組みがなく、発行者を異にする各種の通貨が、地方ごとの通貨需要の状況にあわせてそれぞれ自律的な循環を形成していた。しかし保護国化後、金本位制に基づく統一的な通貨流通が実現され、それまでの雑多な貨幣は駆逐された2.こうした通貨流通システムの統一は、中国人商入の活動形態にも影響を与えた。たとえば朝鮮東北部の場合、保護国化以前には隣接するロシア領から流入するルーブル紙幣が朝鮮入間に広く流通し、開港場の中国人商人はそれを上海に対する国際決済手段として利用した。しかし幣制改革後、流入するルーブル紙幣は銀行が国内通貨に転換し、国際決済通貨としては機能しなくなった。3.このように権力的な制度改革が中国人商人の活動に及ぼした影響を検討する一方、中国入・朝鮮人商人の間で自主的に形成された市場の取引ルールにっいても検討を進めた。近年公開された中国側公館の行政文書から、中国入・朝鮮人間の生じ紛争の事例を抽出し、両者間で商事慣習の相違にかかわらず、一定の共通のルールが形成されつつあったことを検証した。
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All Journal Article (6 results)
年報朝鮮学 10(印刷中)
40018280660
ロシア史研究 78
Pages: 69-78
朝鮮史研究会論文集 44
Pages: 101-131
ロシア史研究 78号(印刷中)
東洋史研究 63-4(発表予定)
軍事史学 40-2・3
Pages: 246-259