Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、弥生青銅器に残された埋没時の痕跡である「青銅器の状態」の資料化・再評価によって、青銅器の埋没状態、つまりは「埋納」状態の復元を意図したものである。具体的には、錆の状態や付着物の状況、あるいは鍬傷といったものを、実測図とともに、デジタル画像情報を用いることによって検討を試みた。まず、埋納時の痕跡が比較的に認識されている資料の検討から、銹の状況や欠損状況について、以下のような特徴を認識した。青銅器自身が直接触れあった箇所は赤色の銹を発することが多い。また、赤色は呈さないが、やや濃い緑色の錆色に盛り上がった部分は、対応する痕跡が密着していた別個体の表面に剥落痕跡等を残すことが多い。欠損部の集中や鍬傷の進入方向が埋納時の上位方向を示すことがある。砂泥の付着痕跡は埋納時の鉛直方向を示すことがあるが、圧着を剥がす際に形成されることも多い、等である。その上で、まとまった出土をみながら、出土状況の詳細が不明なままの、かつ武器形青銅器自体の実測図も十分検討されてこなかった福岡県筑紫野市隈・西小田出土中細形銅戈23口(筑紫野市歴史博物館蔵)と、愛媛県松山市一万出土平形銅剣10口(東京国立博物館蔵)について、埋納状態の復元を試みた。結果、前者はその全容復元には到らなかったが、鋒方向をそろえて刃を立てて、複数のまとまりで埋納されていたことが窺え、後者は、鋒をそろえて水平に埋納されていたことを明らかにできた。ただし、出土後の銹のクリーニングによりネガ・ポジの関係が明確に認識できない、あるいは、デジタル画像上の操作では、資料の立体感がなお把握しがたい、などの課題が残った。後者については、最終的には実物での判断に拠らねばならないが、デジタル画像の操作(オルソ化等)によって、今後かなりの部分を克服できる可能性が高い。