Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成18年度は本研究課題3ヵ年計画の最終年度として、内外の諸研究機関から文献を収集するとともに、古代ギリシア初期民主政思想研究に関連する用語であるイソス(平等な)合成語、つまり、イソノミアー、イソクラティアー、イソモイリアーについて、過去2年間同様の文献学的分析を行った。イソノミアーを例に挙げると、まずはギリシア語文献テキストデータベースを用いて、紀元前8世紀から前5世紀までの現存文献からισονομを含む語全てを検索し、ヒットしたものの中からイソノミアーの全活用形を拾い集めた。こうして網羅的に用例を収集した上で、各用例をそれぞれの文脈において検討し、その意味と性格を考察したのである。同様に、イソクラティアーの場合にはισοκρατを、イソモイリアーの場合にはしισομοιρをもとに行った。以上三用語のこの期間における現存数は、デーモクラティアー自体に比べかなり少ないが、初期民主政と深く関わる用例が多く見られた。その研究成果については、一部を平成19年5月の政治思想学会にて発表予定であり、また論文執筆の準備も進めている。以上の作業終了後、この3年間で検討したデーモクラティアー関連諸用語と、本研究のキーフレーズである「メソン(真ん中)に置く」という表現との関連を検討したところ、さらなる課題が見出された。すなわち、本課題における研究対象はいわばデーモクラティアーの類義語に限定されていたが、初期民主政思想に関する文献学的アプローチの総合的な成果をまとめるためには、その反意語、例えばバシレイアー(王政)、モナルキアー(君主政)、テユラニス(僭主政)、アリストクラティアー(貴族政)、オリガルキアー(寡頭政)などについても、同様に分析する必要があるということである。この新たな課題についてはすでに着手しており、今後一層計画的に取り組むことにしたい。