Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
研究初年度である平成16年度は2度にわたってドイツを訪問し、任意の5つの州について、州財務省や州内務省で土地標準価額の算定方法と実施状況について担当職員より聞き取り調査を行った。さらに、別の任意の3都市において不動産税の徴収状況と問題点について聞き取り調査を行った。その結果、土地標準価額は、本来、不動産売買における購入者の保護や公正な市場取引の実現を目的として評価、公表されているものであるが、第1に、一定期間における土地購入価額の平均値であるため、社会資本投資からの便益を示す指標として優れていることであり、第2に、不動産登記所に提出される売買契約書を利用するため、評価が正確であり、費用が低いことから、ドイツ不動産税における課税標準算定の手段としても優れていることが明確になった。研究2年目で最終年となる平成17年度は、やはりドイツにおいて複数の州ならびに都市を訪問し、現行の不動産税に適用されている不動産評価法とその問題点について聞き取り調査を行った。また、小規模な市町村においては売買事例が少ないことから、特に不動産評価に困難が生じると予想されるため、そのような市町村における評価の事例について聞き取り調査を行った。これらの聞き取り調査結果を、前年度に行った土地標準価額制度に関する聞き取り調査の結果を照らし合わせた結果、個別の条件に左右される現行の不動産税における不動産評価法よりも、いわば平均売買価格といえる土地標準価額の方が、より社会資本投資からの便益を示す指標として、すなわち不動産税の課税標準として望ましいという結論に達した。しかしながら、売買事例の少ない地域においては、評価が任意になったり、あるいは実質的な価値が変動してからそれが評価に反映されるまでの間にタイムラグが生じるという問題点があることが明らかになった。日本の固定資産税は資産課税であると位置づけられているが、主要な地方税であることを鑑みれば、応能原則に基づく資産課税ではなく、応益原則に基づく物税と位置づけるほうが望ましいとも考えられる。もしそのような立場をとるならば、ドイツの土地標準価額制度のような、一定期間における土地購入価額の平均値による不動産評価方法は、日本の固定資産税にとっても有益である。