Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
社会福祉現場において職業資格制度が導入されたことによって、どのようなコンフリクトが生じ、そこからどのような適応の形態が生じてくるか、これを明らかにしていくのが本研究の目的である。本調査研究は高齢者介護施設におけるフィールドワークと社会福祉士(SW)および精神保健福祉士(PSW)へのサーベイ調査の二つの方法によっておこなった。調査の結果得られた知見としては(1)フィールド調査を行った施設では、中間から上層の管理職が介護職員出身の長期勤続者によって占められており、介護職を中心とした典型的な内部労働市場構造を有していた。(2)専門学校で介護士資格を取得した「学卒者」は管理職からは必ずしも高く評価されておらず、その理由は学卒者が同業他事業所への移動可能性を潜在的に持つことへ管理者が懐疑的になっていることが指摘される。(3)SWの専門業務である「相談援助業務」に対し現場での潜在的需要は高いが、SWの雇用配置はほとんど進んでいない。それは現場において存在する問題の解決がSWによる「相談援助業務」によって可能であるという認知が存在していないためと考えられる。(4)キャリアパターンについて、SWはケースワーカーのみならず一般事務職員など多様な職種からキャリアを開始しているのに対し、PSWは初職からPSWである場合が圧倒的に多い。(5)SW、PSWともに資格取得の直前までには特定の職種に移動し、その後は職種や雇用先を変えることはほとんどみられない。総じて国家資格の取得は従業者のキャリアパターンを大きく変容させる契機とはなっておらず、また資格の保有が雇用や地位の保証にもつながっていない。職業資格制度の導入は内部労働市場構造を職業労働市場構造によって置き換えるような作用を果たしておらず、内部労働市場構造は極めて強く存在し、その内部で資格による職種の固定化が行われているという結論が得られた。
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