Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
デンマークで1990年代から増えつつある生活・居住ユニットケアを実施する介護型住宅の実態とそこにおける高齢者の生活状況を明らかにするため現地調査を行った。調査対象の介護型住宅において参与観察とインタビュー調査を実施し、当事者の視点からその実態を把握しようと試みた。その結果まず、住居の質というハード面がそこでの生活の質を高めるとともに、入居者の社会的交流を促し豊かにすることが明らかになった。デンマークでは高齢者の生活においてプライベートスペースは必要不可欠と認識されている。そのプライベートスペースの十分な広さを確保し、生活しやすい構造を保障することが、高齢者のそれまでの生活の継続を可能にしている。またデンマークの介護型住宅は要介護度が最も高い高齢者の入居する住宅であるが、デンマークはこれを施設ではなく住宅と位置づけ、法制度上でも住宅として取り扱われている。このことは、高齢者が「施設」ではなく「住宅」において「受動的」ではなく「能動的」に生活を送る枠組み作りに大きく影響している。さらに日常生活そのものを重視し、日々の調理、食事、家事作業などの時間を豊かなものにしていくために多様な工夫がなされ、人と人との交流が深められるよう取り組みがなされていることが明らかになった。デンマークは高齢者福祉の予算削減によりマンパワー等の面で大きな問題を抱えているが、限られた資源のなかで高齢者の生活の継続性を保障する上で必須となる理念を守り抜くために、次々と新しい試みが実験的に取り入れられている。ユニットケアが広まりつつある我が国の介護分野に大きな示唆を与える取り組みの詳細が明らかになった。
All 2007 2005
All Journal Article (2 results)
IDUN~北欧研究,大阪外国語大学デンマーク語・スウェーデン語研究室 Vol. 17
Pages: 207-226
IDUN,大阪外国語大学デンマーク語・スウェーデン語研究室 Vol.16
Pages: 167-198
110006177708