Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 2006: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2005: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2004: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
本年度研究計画として,(1)平成16年の調査旅行中発見された川本清一の手による「心理学」という2つの翻訳稿本(アレキサンダー・ベイン原著 日本学士院蔵,一橋大学図書館蔵)それぞれを,ベインの原著"Mental Science"と照合させ,「自我」にかかわる諸名称および諸概念(「自覚」「意識」等)と原語との対応関係,そして後年に刊行されたベインの日本語版(井上哲次郎,松島剛ら,矢嶋錦蔵による3点)との対応関係を明らかにしつつ,訳語の定着過程と意味内容を分析検討すること(2)日本初の心理学の教授である元良勇次郎が用いた「自我」概念の意味内容の変遷を追い,さらに元良の弟子でジェームズの著作を訳出している福来友吉の「自我」概念について分析考察を行なうこと。加えて,後続の研究者たち(松本亦太郎,千葉胤成,増田惟茂など)がこの概念をどう捉えていたかについても考察すること,という2つのテーマを挙げていた。このうち(1)については作業過程にあり,結果を平成18年度中に雑誌『心理学史・心理学論』に投稿予定である。一方,(2)のうち,元良の「自我」の内容は裏面項目11の1番目の英語論文及び3番目の共著論文においてその一部を明らかにした。後者の論文は日本心理学会第69回大会にて行なわれたワークショップでの報告をもとにしている。このなかで鈴木は,精神分析の中心的概念である「自我」と「無意識」それぞれが,精神分析輸入前後の時期に心理学的な文脈のなかでいかに受けとめられていたかを,元良のほか上野陽一,増田惟茂らの著作から分析したが,特に「自我」概念の展開については明治20年代半ばからの「自我実現説」(T.H.グリーンの説が中島力造によって翻訳された)の流行から受けた影響を指摘している。以上と並行して,元良の「自我」概念を解く上で貴重な資料である博士学位論文"Exchange"の翻訳及び分析作業も継続している(裏面項目11の2番目・4番目)。
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