Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本年度は韓国の学校現場で実践されている歴史授業に関する各種データを収集・分析しつつ、政治的民主化を受けるとともに教育現場の民主化も加速し、授業現場レベルにおいて実践内容も多様化していく韓国歴史教育の実態を、構造的観点から明確にしていった。また、これらのデータを総合して3年間の研究成果をまとめ、発表や授業に反映させていくことを積極的に推進した。具体的には、研究代表者は平成18年3月より1年間、長崎大学研究高度化推進経費(海外派遣)事業の支援を得て韓国・国立忠南大学校社会科学大学社会学科の客員(訪問)教授に着任した。そこで、本研究成果をもとに同大学社会学科の授業「社会学特講」(平成18年3月〜6月)にて44名の韓国人学生に対し日韓の現代における歴史教育多様化構造とその背景の共通点・相違点について講義した。平成18年4月27日及び11月23日には、同じく東国大学校師範大学教育学科学生約30名に向けて、本研究成果をもとにアジアにおける近現代の変遷と、それに伴う近代教育史での歴史教育内容の「集権制」と「多様性」構造の日韓比較について特別講義を行った(いずれも韓国語による講義)。忠南大学校大学院(教育学科)講義「教育社会学演習II」(平成18年9月〜12月)においても本研究内容を用いた授業を展開し、授業を選択した博士課程在籍韓国人及び中国人留学生を交えてディスカッションを加え、研究成果のまとめに関して、特に国家の歴史教育に対する関与構造と現場実践との関係分析の観点において多くの知見を得ることができた。また、平成18年11月17日には名古屋大学で開催された日米韓中独5カ国の歴史及び歴史教育研究者による歴史教育政策に関する国際ワークショップにおいて、特に韓国における民主化をはさんだ歴史教育をとりまく政治的・社会的背景の激変と、それに伴う2000年以後の歴史教育内容の多様化事例について発表し各国研究者との議論を行うとともに、次の研究発展に向けた国際的な研究ネットワークを構築することができた。