Project/Area Number |
16740276
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Meteorology/Physical oceanography/Hydrology
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
栗田 直幸 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究センター, ポストドクトラル研究員 (60371738)
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Project Period (FY) |
2004 – 2005
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2005)
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Budget Amount *help |
¥3,700,000 (Direct Cost: ¥3,700,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2004: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
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Keywords | 大陸水循環 / 安定同位体 / 大循環モデル / 水蒸気採取 / 水蒸気 |
Research Abstract |
研究実施計画書に基づき、行った研究実績を以下にまとめる。 (1)水蒸気同位体観測法の確立 当初使用予定だった商用の除湿器が製造中止になってしまった為に、今回汎用品の流用をあきらめ、新たに自動で水蒸気を簡便に採取できる装置の開発を行った。新方式では、密閉容器内を加圧し、飽和水蒸気を越えた水蒸気が凝結し、容器下部に凝結水が溜まる仕組みになっている。またこの新方式の採取装置で採取された水蒸気の同位体比が現実の値を再現しているか明らかにするために、同位体機知の水蒸気を発生させられる、水蒸気発生装置の開発も同時に行った。この水蒸気発生装置で生成された水蒸気を新方式の水蒸気補修装置で採取したところ、捕集した水蒸気の同位体比は、発生させたものと比較して同位体濃度が高くでることがわかり、回収率が100%でないことに起因する誤差があることが確認され、現在その誤差を補正する実験式を作成する作業を継続している。今回は採取装置の開発が遅れた為に、補助金支給期間内に装置を野外観測に応用するところまではできなかったが、汎用的な新しい装置そのものは完成させることができた。 (2)シベリアにおける広域同位体観測ステーションの設置 シベリアでの観測は、現地の情勢変化に実施が困難となったために、チベット高原において、大陸内部における水蒸気の同位体比変動観測を行った。現地観測は、2004年8月にチベット高原中部に位置する那曲で行い、地表付近の水蒸気を6時間毎に連続して2週間観測を行った。また、採取した水蒸気に地表面からの蒸発散水の寄与を調べるために地表面から蒸発する水蒸気を同時に採取した。まず観測された蒸発散水の同位体比は、午前から夕方に向かって徐々に同位体比が高くなる顕著な日変化を示すとともに,表層の土壌水分量の変化に応じた顕著な時系列変化を示した。この原因を調べるために、鉛直1次元の陸面モデルに同位体組み込んだモデル解析結果を使って調べたところ、大まかな変化は、降水の同位体比変化に応答していることが示された。また、さらに細かい変動では、蒸発と蒸散の寄与率変化に応じて同位体比が変化しており、同位体トレーサーは、蒸発と蒸散の比の時間変化を調べる非常によいトレーサーであることが今回の観測から明らかになった.(Kurita and Yoshimura, 2006)。次にこのような顕著な時間変化が観測された地表面FLUXの同位体比変動と、地表付近で観測された水蒸気の同位体比を比較したところ、水蒸気の同位体比は、蒸発散水の変動に応答した時系列変動を示しており、地表面で観測される水蒸気は、大規模な循環を反映したものというよりもむしろ局地的な影響を強くうけていることがわかった。昨年の解析では、降水と水蒸気の同位体比が一致していることから、水蒸気の同位体比変化は、大気循環場の変動を反映していると考えられたが、今回のモデル結果から、降水が蒸発散水の変動に大きく影響しているために、地表面の水蒸気の同位体比変化と降水の同位体比の変化が一致していることが明らかになり、大気循環変動を解釈するためには、より高々度において同位体観測を行う必要性が今回の観測から示された。 (3)同位体大規模循環モデル結果の検証 既存の同位体大循環モデルを最新版のCCSR/NIES/FRCGCに移植する作業を昨年度から引き続き行い、プログラムバグの修正等を引き続き行うことで、観測された同位体比の特徴を再現することが可能になった。最新の結果では、シベリア域で観測された内陸部に向かって夏期に降水の同位体比が徐々に減少するといった特徴を再現することが可能になり、この同位体比変動は、地表面から蒸発する水の同位体比の分布が同様に内陸に向かうにつれて軽くなることが原因であることがわかった。これは、西シベリアでは、一降水の同位体比の季節変化に応じて表層土壌水の同位体比が変化しているのに対し、東シベリアでは、夏期に降水する同位体比よりも、軽い同位体比をもった水が維持されることに起因している。つまり、東シベリアでは、夏期の土壌水分に、夏期降水よりも軽い同位体比をもつ融雪の寄与が残っており、この融雪水の寄与がシベリアにおける蒸発水の同位体分布を作り出していることが明らかになった。このように同位体モデルを使って観測値を再現することによって、これまで観測できなかった、夏期降水に対する融雪水の寄与を証明することが可能になった。
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