Budget Amount *help |
¥3,200,000 (Direct Cost: ¥3,200,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2004: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
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Research Abstract |
本研究では,透過型電子顕微鏡(TEM)に付随した電子線エネルギー損失分光(EELS)と理論計算を駆使し,材料中の水素周囲の局所構造解析を行うことを目的とした.特に,特定の回折条件下での分光により得られる,特定の原子面からのエネルギー損失スペクトルの活用を試みた.このサイト選択的分光は,現時点では,定量的分析に向けた理論解析の整備段階であり,Mn_3O_4やNiAl_2O_4といったモデル的な結晶において,定性的に非経験的量子化学計算から得られたサイトごとのスペクトルと対応する成果を得ている.これは,2005年オーストリアで開かれたEELS国際ワークショップで発表し,関連する論文誌Ultramicroscopyに投稿中である. 一方,通常のEELSの使用法で,鉄炭化物中の水素の分析を行った.ホワイトラインと呼ばれる鉄のL_<2,3>端EELSスペクトルは水素により大きくL_3/L_2の相対強度比が低下することを実験的に確証した.この変化を利用して,水素の間接的な高空間分解能分布をTEM-EELSより得ることを試みた.分析した鉄炭化物中に水素は濃度がほぼ均一に存在するため,鉄炭化物の厚みに比例したコントラストを得る結果となったが,濃度分布のある厚みの均一な試料で同様の分析を準備している.水素により鉄の化学結合状態がどのように変化したか調べるため,X線吸収スペクトルを測定し,非経験的量子化学計算から理論解析を行った.この結果,水素は結合欠損のある鉄原子近傍に吸着し,鉄-水素結合により鉄のd電子p電子の状態が大きく変化することが示された.以上の結果は,2006年オーストリアで開かれるTEMと密度汎関数法計算のワークショップで発表予定であり,関連論文誌に投稿中である.
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