Budget Amount *help |
¥3,700,000 (Direct Cost: ¥3,700,000)
Fiscal Year 2005: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2004: ¥2,900,000 (Direct Cost: ¥2,900,000)
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Research Abstract |
異なる金属を交互に積層させることにより作製する多層膜は,一層あたりの層間隔をナノスケールまで減少させることによって優れた強度特性が期待できる.これまでの研究結果から多層膜の硬度は層間隔に依存し,硬度は層間隔の減少にともなって増加するが,層間隔が10nm付近で極大値となり,それより短い間隔では急激に硬度が低下するということがわかっている.本研究ではこの原因を明らかにするため,TEMを用いて銅単結晶上に作製したNi/Cuナノ多層膜の微視的構造を調査した.正面方位(111)の銅単結晶を作製し,それぞれの基盤の上に層間隔h=5nmおよび100nmのNi/Cuナノ多層膜コーティングを施した.多層膜の作製法には電気めっき法を利用した.層間隔100nmの多層膜断面のTEM観察では,Ni層とCu層の交互の積層が確認できた.その電子線回折像では斑点は分裂していた.これは銅とニッケルの格子定数が異なることに起因しているが,このことからNiとCu層は同じ方位に成長していることが明らかになった.結晶方位が同じで,格子定数が異なる金属間の界面には幾何学的にミスフィット転位が存在するはずであるが,TEM像からもミスフィット転位のコントラストが確認できた.このようなミスフィット転位が多層膜の高強度の原因である可能性がある.層間隔5nmの多層膜断面のTEM観察では,この多層膜では複数の結晶粒から構成されていることがわかった.EDS分析の結果,この多層膜ではNiとCu濃度が均一ではなかった.その微視的構造も均一ではなく,多層膜構造が見られた領域や多層膜がない領域,さらには双晶が形成された領域が混在していた.多層膜が見られた領域でも層間隔100nm多層膜のような回折斑点の分離が見られないため,界面にミスフィット転位が存在していない可能性がある.多層膜のない領域やミスフィット転位がない多層膜がこの多層膜の強度低下の原因の一つと考えられる.
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