Budget Amount *help |
¥3,200,000 (Direct Cost: ¥3,200,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2004: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
同一集団内にショウジョウバカマとシロバナショウジョウバカマという2つの近縁な種が生育している兵庫県集団では,両種を特徴づける複数の形質を様々な組み合わせで一個体中に併せ持つ雑種個体が見られた.この集団の開花個体について,土壌の深さ・質,Ao層の有無,岩の有無について5つの生育地タイプに分け,それぞれの生育地と形態形質・遺伝的変異の関係について調べた.結果,雑種個体の多くは,両種の典型的な生育地タイプではなく,中間的な生育地タイプに生えていた.形態的マーカー(花被片色,蜜線の位置,葉縁の形状)と遺伝的マーカー(葉緑体DNA,マイクロサテライト解析)について,形質状態を生育地タイプごとに比率で示したところ,形態・遺伝的形質ともに,段階的な変化を示しており,全ての形質と生育地タイプとの間には相関が見られた.なお,各生育地タイプは散在しており,必ずしも同じタイプが一箇所に集中しているわけではないので,生育地タイプと各形質の相関関係が個体間の距離を反映しているとは考えにくい.また,マイクロサテライトデータを用いて花色と蜜腺の位置について主座標分析を行ったところ,花の形態は選択を受けており,異なった形態の花の間では遺伝子の交流が制限されている可能性が示唆された. 本研究によって,両種は基本的には生育地の違いと花の形態の違いによって隔離されていることが分かった.しかし,パッチ状に分散した両種の中間的な生育地を交雑帯として時々雑種が形成され,さらにそれらからショウジョウバカマの方向に向かって浸透性交雑が生じている可能性が示唆された.また,本種のような単純なつくりの花においても送粉者に対するシグナルが変化することによって選択を受け,受粉隔離が成立する可能性が示唆された.
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