Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
蛋白質には、熱力学的に最安定な天然状態だけではなく、準安定状態を含めた様々な非天然状態が共存し、それらは平衡で存在する。天然状態内での揺らぎだけでなく、それら非天然状態の存在や状態間の揺らぎは、蛋白質の機能発現、安定性、凝集、寿命など多くの問題に重要な役割を果たしている。本研究では、蛋白質準安定状態をはじめとする蛋白質の非天然状態の、構造・安定性・出現機構を研究した。1.準安定状態や揺らぎの情報に基づく創薬桑田・鎌足らはこれまでにプリオン蛋白質の遅い揺らぎを調べ準安定状態の存在を示した。そして、蛋白質準安定状態の応用研究として、桑田らの提唱する揺らぎの情報に基づく創薬(dynamic based drug design ; DBDD)によるプリオン病治療薬を試みている。その中でいくつかの有望な化合物が見つけられた。本年度はこの中の一番有効であった化合物GN8とプリオン蛋白質が実際に結合することを示し、またその結合部位の同定を行った。さらに、薬剤の結合によるタンパク質の安定性の変化があることを示した(submitted to PNAS)。2.凝集やアミロイド形成機構の解明近年我々は、蛋白質の揺らぎの中でも特に解離・会合という大きな揺らぎに注目した研究も展開している。本年度は、圧力の視点から、これまでの凝集やアミロイド形成に対する構造および揺らぎに関する研究をまとめ、蛋白質の解離・会合を圧力で制御することの可能性と課題を探った。そして、圧力で解離・会合を制御するという試みは、(1)天然状態の会合体だけでなくアミロイドを含めた凝集体の解離・会合の機構を明らかにするため、(2)より効率的で簡便な凝集体から天然構造への巻き戻しを実現するため、(3)凝集を抑えて天然状態または中間状態の構造研究を可能にする条件を実現するために、有用であることを示した。
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生物物理 47
Pages: 12-16
110006201583
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