Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
X染色体不活性化に必須の役割を果たすnon-coding RNAであるXist RNAの機能を解明する目的で、Xist RNAと相互作用する因子の同定を目的として研究を進めた。本来胚発生初期に起こるX染色体不活性化をマウス雌ES細胞を用いて、in vitroで再現することができる。マウス雌ES細胞の一方のX染色体のXist遺伝子内にファージ由来RNA結合タンパク質であるMS2タンパク質の結合サイトを遺伝子ターゲティングにより導入した細胞株を既に樹立していた。本年度、MS2タンパク質にFLAG-Strepタグを融合したタンパク質を大腸菌内で発現させ、融合タンパク質の精製を試みた。FLAG抗体ビーズによる精製は可能であったが、Strepタグによる精製は回収効率が著しく低かった。FLAG同様効率よく精製可能であったHAタグを融合したタンパク質を大腸菌内で発現させ、精製した。精製タンパクはMS2結合配列を特異的に認識することが確認できたので、精製タンパク質を抗FLAG抗体カラムに結合させ、Xist RNA精製用のカラムを作製した。一方、Xist RNAが高発現し始める時期を特定するために、RNA FISHによる観察を行った。分化誘導後5-6日で半数以上の細胞でXist RNAの高発現が観察された。これ以降、Xist RNAを高発現する細胞の割合は更に増えるが、それに伴いヘテロクロマチン化の形成が進みXist RNAを含むタンパク質複合体の抽出が困難になる。ES細胞からの核抽出液またはDnaseによりクロマチンを可溶化したクロマチン分画を用いて精製を進めた。Xist RNAがヘテロクロマチン分画にあることもあり、現在までに質量分析に充分量のRNA-タンパク質複合体を精製できていない。しかし、別の方法によるアプローチでは一定の成果をあげている。マクロH2A(mH2A)は、不活型X染色体に局在するヒストンH2Aバリアントであるが、このmH2Aがモノユビキチン化修飾を受けると、さらにその修飾部位の同定に成功した。mH2A及びmH2Aのモノユビキチン化修飾が、X染色体不活性化の中でどのような役割を果たすか興味深い。