Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
研究代表者は頭尾軸および背腹軸の形成機構を解明することを目的として、アフリカツメガエル胚を用いた発現クローニング法をおこない、頭部の形成を阻害する遺伝子を単離した。この遺伝子は細胞骨格の制御に重要な役割を果すRhoファミリーに属する新奇の遺伝子であり、頭部形成を阻害することからkao-nashi(kash)と名付けた。kash遺伝子は、原腸胚期の原口上唇部に強く発現しており、神経胚期には頭部外胚葉部分、特に将来の神経堤細胞領域に発現の局在が認められることから、外胚葉細胞の分化・移動に関与する可能性が考えられた。本研究では、(1)過剰発現および機能阻害実験によって頭部外胚葉形成におけるkash遺伝子の機能を明らかにすること、(2)酵母Two-hybridスクリーニング法によってkashタンパク質と結合するタンパク質を同定し、初期胚におけるkashタンパク質の作用機構および活性制御機を解析すること、(3)神経堤細胞領域におけるkash遺伝子の発現制御機構を解析することを主な目的とした。これまでに、(1)Kashの過剰発現によって、神経堤細胞マーカーの発現領域が拡大すること、(2)酵母Two-hybridスクリーニング法によって単離されたkash結合タンパク質にはアクチン制御タンパク質に関連した遺伝子群が複数含まれていること、(3)神経堤細胞の形成に関与するWntシグナルによって、Kash遺伝子の発現が誘導されることが明らかになった。今後は、kash遺伝子のより詳細な機能阻害実験、およびkash結合タンパク質の機能解析を中心に研究をおこなう予定である。