Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
昨年度の研究において、食塩感受性高血圧モデルであるダール食塩感受性(DS)ラットの腎臓では、高食塩負荷後に活性酸素産生酵素であるNADPHオキシダーゼの発現上昇に伴って、MCP-1の発現が増加することを明らかにした。このMCP-1の発現増加はチオール含有抗酸化剤N-アセチルシステインの投与により抑制されることから、活性酸素(過酸化水素)がMCP-1の発現に関与していると考えられた。本年度は、MCP-1発現の食塩負荷後の経時変化を調べ、血圧の上昇および蛋白尿とMCP-1産生との関連について検討した。血圧および尿中蛋白排泄量は、高食塩負荷開始後4週目まで時間とともに増加したが、尿中MCP-1排泄量と過酸化水素排泄量は、共に食塩負荷開始後1週目で10倍以上増加し、4週目まで高レベルを維持した。また同様に、腎皮質におけるMCP-1 mRNAの発現も1週目から顕著な増加が観察された。一方、食塩抵抗性であるSprague Dawleyラットでは、食塩負荷後の尿中MCP-1排泄量の増加、腎皮質におけるMCP-1 mRNAの発現上昇は観察されず、血圧の上昇も見られなかった。これらの結果から、DSラットで観察される食塩負荷後のMCP-1発現増加は、血圧の上昇や蛋白尿により惹起されたものではなく、酸化ストレスに付随していることが強く示唆された。さらに、食塩負荷後早期における活性酸素とMCP-1発現の増加は、DSラットの高血圧および腎障害の進展における酸化ストレスとMCP-1の関与を示唆するものと考えられた。活性酸素(過酸化水素)がMCP-1の発現を誘導する機序については、レドックス感受性の転写因子であるAP-1やNFkBの関与が考えられるが、これら転写因子の活性動態については更なる検討を要する。
All 2004
All Journal Article (1 results)
Free Radical Biology & Medicine 37
Pages: 1813-1820