Research Abstract |
糖鎖合成の原料となるGDP-マンノースの合成に関わる遺伝子について,Candida glabrataおよびC.albicansを用いて以下の3点を明らかにした. 1.C.glabrataにおいて,GDP-マンノース合成経路の位置する酵素(PMM1:mannose phosphomutase, ALG1:mannosyl transferase, DPM1:,Dolicol-phosphate mannose synthase, YRG4:GDP-mannose transporter)のプロモーターをテトラサイクリン応答性プロモーターに置換した変異株を作製した.テトラサイクリンの誘導体であるドキシサイクリンを加え,PMM1,ALGG1,DPM1およびVRG4遺伝子の発現を抑制したところ,グルコース,マンノース,グリセロール,それぞれを炭素源にしたいずれの培地でも菌の増殖は見られず,試験管内では生育に必須であることが分かった.今後,マウス体内での増殖の必須性について検討する. 2.昨年度までの結果から,C.glabrataにおいてはGDP-mannose pyrophosphorylaseは2つ存在し(PSA1,PSA2),PSA1は,グルコースが炭素源のときのみ,生育に対して必須で,また,PSA2の発現はグルコースによって抑制を受けることが明らかとなった。今年度は,さらに培養条件を変えて,これら2遺伝子の発現量を調べたところ,嫌気条件下の培養ではPSA1の発現は増強され,PSA2の発現は抑制されていた.このことからも,PSA1とPSA2の発現は相補的であることが示唆された.また,嫌気条件下のpsa1欠損株が宿主体内と異なり,生育できなかったことから,宿主体内の培養を考える上では,嫌気条件だけでは不十分なことが示唆された。そのため,抗真菌剤のスクリーニングに使用する培地は検討が必要であろうと考えられた. 3.C.glabrataと同様GDP-mannose pyrophosphorylaseを2遺伝子(CaPSA1,CaPSA2)もつC.albicansについて,炭素源を変化させ,これら2遺伝子の発現量を調べたところ,CaPSA1はグリセロール培地ではほとんど発現せず,グルコース培地での発現が一番高かった.また,CaPSA2はグルコース培地での発現が一番低かった.このように,C.glabrataと同様なこれら2遺伝子の発現は相補的になされていることが分かった.今後変異体を用いて,CaPSA1,CaPSA2の特徴づけを行う予定である.
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