Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
HCV持続感染に関与する肝内免疫環境の経時的変化の解析§HCV蛋白持続発現モデル都立臨床医学研究所の小原博士らが作製した、HCVTgマウスCN2を用いて下記の検討を行った。このマウスはCre/loxPシステムを用いたHCVTgマウスに生後10週目にCre DNA recombinase発現アデノウイルスを感染させ肝細胞にcore、E1、E2蛋白を発現させたもので、HCV特異的CTL誘導をともなう急性肝炎を生じ、数週後にはHCV関連蛋白が持続発現しているにも関わらずHCVに対する免疫応答が減弱するモデルである。§肝障害の経時的変化肝細胞におけるHCV蛋白発現誘導前、発現後3、7、10、14、30日後に肝臓と血液を採取、肝炎活動性の病理組織学的評価、血清ALT値測定、肝細胞におけるHCV蛋白発現量の評価を行なった。その結果、血清ALT値は発現3日後には上昇を開始し7日をピークに減少することが明らかになった。肝内におけるHCV蛋白発現量はほぼ一定で、経時的変化は認めなかった。また病理組織学的検討では、血清ALT値の上昇に相関して3日から7日目にかけて肝内に単核球浸潤がみられた。§肝内浸潤細胞の経時的な量的、質的変化各時点で肝内浸潤単核球を分離しFACSで分析したところ、肝炎の増強にともない肝内浸潤してくる細胞はNK細胞であることが明らかになった。さらにこのNK細胞はIFN-γを産生していることが明らかになった。また肝内へのCD4陽性、CD8陽性T細胞の浸潤はみられなかった。以上より、HCV蛋白発現にともなう肝炎の初期発症時には、NK細胞によるIFN-γを介した肝細胞障害が関与していることが明らかになった。