Budget Amount *help |
¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
|
Research Abstract |
進行性腎障害により維持血液透析に導入される患者数は本邦にて年々増加しており、新規の腎障害進展制御法の開発が医療財政上からも急務である。種々の原疾患より末期腎不全に至るが、共通した組織学的変化は糸球体硬化・尿細管間質の線維化である。昨年度の本研究にて、可逆性増殖性腎炎モデルであるラット抗Thy-1腎炎を惹起する5日前よりAngiotensin II(A-II)-infusionを行うと、メサンギウム細胞増殖・基質増加が抑制されるが、その際に血管新生関連因子であるVEGF,flk-1,flt-1受容体,Angiopoietin-1(Ang-1),Tie-2受容体の発現増加及び糸球体内皮細胞領域の回復作用を認め、その作用はAT1及びAT2受容体を介していた(Takazawa Y, Maeshima Y, et al., KidneyInt.2005)。 Ang-1は血管安定化・血管透過性制御作用を有し、糖尿病性網膜症モデル等における抗炎症効果・治療効果が報告されている。今年度は、新規治療法開発の観点に立ち、腎間質線維化の実験モデルである片側尿管結紮(UUO)マウスを用いて、Ang-1発現アデノウィルスベクター投与による治療効果を検討した。片側尿管結紮マウスの筋肉内にAng-1発現アデノウィルスベクター(AdAng1)もしくは対照としてβ-galactosidase発現アデノウィルスベクター(AdLacZ)を投与した(1x10^9vp/animal)。UUO day 3及び7にて血清中Ang-1はAdAng1群においてAdLacZ群に比して3倍に増加していた。腎間質線維化・間質におけるI及びIII型コラーゲン蓄積はUUO day 7にてAdLacZ群にて著明に観察されたが、AdAng1群では有意な抑制効果を認めた。腎線維化に関与するTGF-beta1発現(腎皮質)はUUO day 7にてAdLacZ群にて増加していたがAdAng1群にて抑制効果を認めた。また、UUO day 7にてAdLacZ群にて著明な間質単球マクロファージ浸潤を認め、単球浸潤に関与するMCP-1,IL-6の発現増加(腎皮質)を認めたが、AdAng1群では有意な抑制効果を認めた。腎皮質におけるVEGF発現はAdAng1群にて変化はなく、Ang-1は軽度増加に留まったが、Ang-1の内在性拮抗作用を持つAngiopoietin-2(Ang-2)発現のUUO day 7における増加がAdAng1群にて抑制された。AdAng1投与によりAng-1/2比の増加による血管安定化機序・抗炎症機序が示唆された。なお、傍尿細管血管領域(CD31染色)はAdAng1投与による有意な変化を認めなかった。細胞間接着に関与するoccludin,claudin-1発現がAdAng1群にて増加し抗炎症効果への関与が示唆された(現在、投稿準備中)。 なお、我々は血管新生制御による糖尿病性腎症治療効果の検討を継続して行っており、血管基底膜を構成するXVIII型コラーゲンに由来するendostatinのN末端のpeptide domainに早期腎症治療効果があることを報告した(Ichinose K, Maeshima Y, et al., Diabetes,2005)。また、血管新生抑制作用を有する小分子物質NM-3による2型糖尿病モデルマウスにおける腎症治療効果を観察し得た(Ichinose K, Maeshima Y, et al., Diabetes, in press)。さらに、妊娠中毒症において健常妊婦で増加する血清Ang-2濃度が低値を示す結果を報告した(Hirokoshi K, Am J Hypertens, 2005)。 このように、腎における血管新生関連因子の発現制御・治療効果等を検討することにより、慢性腎臓病の新規治療法の開発を今後も試みる予定である。
|