Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
2000年に申請者らのグループをはじめ世界の研究者らによりニューロメジンUの受容体が同定されたのを機にニューロメジンUの生理機能の解析がすすめられている。申請者らはこれまでにラットへの投与実験により、ニューロメジンUが摂食行動並びにエネルギー代謝調節、概日リズム調節やストレス行動に関与することを報告してきた(業績1)。今回、申請者らの作製したニューロメジンU欠損マウスが肥満を呈し、遅発性の糖尿病や高脂血症を引き起こすことが判明した。ニューロメジンU欠損マウスの肥満の成因としては、摂食量の増加に加え、行動量の低下、並びに基礎代謝の低下が関与することを明らかにした。また、ニューロメジンU欠損マウスでは脳内摂食関連ペプチドのうち摂食抑制効果を持つ、POMCやCRFの減少が見られ、これらの発現低下が肥満の原因であることが判明した。多くの摂食・エネルギー代謝関連物質は脂肪より分泌されるレプチンの調節下にあると報告されているが今回、我々はニューロメジンUがレプチン調節系とは独立してエネルギー代謝機構に働くことも明らかにした(業績3)。更に申請者らはニューロメジンU並びにニューロメジンU受容体が生体内リズムを司る視交叉上核に存在することより、ニューロメジンUの睡眠・覚醒調節機能への関与について解析した。正常ラットでは視交叉上核の内因性ニューロメジンU自体も分泌リズムを持って機能し、さらに、ニューロメジンUを脳室内投与すると生体内リズムの変化が起きることも判明した(業績1)。以上からニューロメジンUは内因性の生体内リズム振動体であることが示唆された。また、ニューロメジンU欠損マウスは著しいリズム障害を呈することも明らかとなった。更にニューロメジンU欠損マウスでは、様々なストレスに対する反応性の鈍さも認められ、そのメカニズムの解析についても一部報告した(業績4)。このようにニューロメジンUは摂食・エネルギー代謝機構や睡眠・覚醒調節機構等に重要な役割をもつ神経ペプチドであることが判明した。摂食行動と生体内リズム調節機構は密接に関連しているもののその詳しい機序についてはまだ不明な点が多い。さらなる研究によるこれらの機能の解明を行う予定である。
All 2004
All Journal Article (4 results)
Biochemical and Biophysical Research Communications 318・1
Pages: 156-161
Nature Medicine 18・2
Pages: 739-743
Nature Medicine 10・10
Pages: 1067-1073
Biochemical and Biophysical Research Communications 323・2
Pages: 615-620