Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
強皮症は皮膚および内臓の線維化と微小血管病変を主体とする疾患で、主に核蛋白に対する高力価の自己抗体が血清中に出現する免疫学的特徴を持つと同時に、線維芽細胞の形質変化という細胞生物学的特徴も併せもち、いずれも強皮症の病態において重要な役割を果たしている。我々は強皮症患者血清を用いたcDNAライブラリーのスクリーニングにより健常組織では精巣にのみ高発現する新たな自己抗原PHET(Protein Highly Expressed in Testis)を同定し、PHETが強皮症由来の培養皮膚線維芽細胞で高発現すること、抗PHET抗体は強皮症に特異的で、その陽性例はより強い線維化病変をもつことを報告した。PHETはJIP4(JNK Interacting Protein 4)ファミリーに属する遺伝子で、JIP4に属する遺伝子の1つが細胞内シグナルの活性化に関与することが既に報告されている。したがってこれらの成績から皮膚線維芽細胞で高発現するPHETが線維芽細胞内情報伝達の変化に関与し、その結果線維芽細胞の形質転換を誘導する可能性が考えられた。そこで新規精巣抗原PHETの皮膚線維芽細胞の形質発現における役割を追究し、強皮症における線維化病態を解明することを目的とした。本年はまずin vivoでのPHET mRNAの発現をin situ hybridization法により解析した。強皮症皮膚組織では真皮深層の線維芽細胞および血管内皮細胞にPHET mRNAの発現を認めた。また限局型強皮症(モルフェア)では血管内皮にPHET mRNAを検出する症例を認めたが、ケロイドなど他疾患由来の皮膚組織ではPHETの発現を認めなかった。以上より、皮膚線維芽細胞におけるPHETの発現が、強皮症の病態と関連する可能性が示唆された。現在、ウサギをPHET特有のペプチドで免疫して得られたポリクローナル抗体を用いて、免疫組織化学によるPHET蛋白発現レベルの解析を試みている他、PHET遺伝子導入による線維化への影響をin vivoで解析するための準備として、健常ヒト皮膚片を免疫不全マウスに移植して生着させ、遺伝子導入して評価することが可能かどうか、基礎実験を行っている。
All 2004
All Journal Article (4 results)
Arthritis and Rheumatism 50・11
Pages: 3658-3662
臨床免疫 42・2
Pages: 214-217
40006398254
Annual Scientific Meeting of American College of Rheumatology
第48回日本リウマチ学会総会・学術集会