Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
前年度の結果を踏まえて二核種オートラジオグラフィの実験プロトコルを確定し、心筋虚血モデルラットを用いた実験を施行した。行った実験はFRP170と血流製剤IAP、糖代謝製剤Deoxyglucose(DG)、脂肪酸代謝製剤BMIPPの比較である。さらにstreptozotocin投与により作成した糖尿病モデルラットを用いて、FRP170とDGの比較も行った。FRP170が短半減期のF-18で標識されているのに対し、他の三製剤はI-125やC-14といった長半減期の核種で標識されている。この半減期の差を利用して、同一切片から2つの画像が得られるため、詳細な比較検討が可能である。まず、FRP170と血流あるいは脂肪酸代謝の比較では、血流あるいは脂肪酸代謝低下域中にFRP170の高集積域と低集積域が認められた。糖代謝製剤との比較では、FRP170とDGの分布は一見類似していたが、FRP170の方が画像コントラストが良好で高集積域の範囲も広かった。一方、糖尿病モデルを用いた検討では、糖代謝製剤DGによる画像は集積やコントラストが著明に低下したのに対し、FRP170の画像には明らかな差は認めなかった。以上より、FRP170を用いることで虚血領域を生存域と壊死域に分別することができ、さらに糖尿病下においても同等の画像コントラストが得られることが立証された。臨床的に虚血下生存心筋の検出に関しては糖代謝製剤FDGを用いたPET検査がgold standardとされているが、低酸素マーカーFRP170を用いることで、同等の検出能が期待でき、さらに糖尿病患者においても安定した検査が可能となることが示唆された。糖尿病は虚血性心疾患の大きなリスクファクターの一つであるが、FDG検査では評価が困難である。FRP170を用いることで虚血心筋をさらに正確に評価できることが期待される。