Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
NFATは炎症性サイトカインの産生を促す転写因子として研究され、calcineurinによって活性型となり、標的遺伝子の転写を開始する。免疫抑制剤であるCsAやFK506はcalcineurinを選択的に抑制することでNFATの機能を阻害し、免疫抑制作用を起こす。我々は最近、破骨細胞へのCsA投与がアポトーシスを誘導すること、破骨細胞にNFATが発現していること、破骨細胞分化因子であるRANKLによってNFATの発現が上昇すること、破骨細胞系株に活性型NFATを過剰発現させるとRANKL投与なしに骨吸収能を持つ破骨細胞へと分化することなどを発見した。また、破骨細胞がFas/FasL経路でアポトーシスを起こすことや、破骨細胞のFas発現にRANKLが関与していること、関節リウマチ部の滑膜の繊維芽細胞におけるVEGF産生にNFATが重要であり、VEGFは破骨細胞の活性化を促すこと、骨芽細胞にcalcineurinを過剰発現させると同化作用が進むこと、なども報告されている。本研究の目的はこれらの点を踏まえ、破骨細胞や骨芽細胞、繊維芽細胞といった骨系各細胞における、生存や活性、死に及ぼすNFATの役割を明らかにすることである。現在までにマウス骨髄由来の破骨細胞を用い、NFATの抑制によってERKやAktといった生存因子の産生が抑制されること、NF-κBには影響を与えていないことが判明した。また、骨芽細胞系細胞(MC3T3-E1)にmRNAレベルでNFATが発現していることを確認し、培養系においてNFATを抑制したところ、ミネラルノジュール形成が抑制され細胞の活性化も抑制された。マウス骨髄由来の繊維芽細胞に関してはCsA投与によって生存が抑制されることを確認し、マウス骨髄由来の骨芽細胞においてはCsA投与によってERKとAktの発現が蛋白レベルで抑制されることが確認された。