Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
Fischerラットの骨髄細胞を採取し、それらを骨芽細胞様細胞への分化を誘導するために、基本培地にβ-グリセロリン酸、デキサメタゾン、アスコルビン酸を添加した培地で培養したものと、添加しない培地で培養したものとに分けた。多孔性β-TCPブロック(オスフェリオン【○!R】)にそれぞれの群の細胞を播種し、前者を分化誘導群、後者を非誘導群とし、骨髄細胞を播種しないβ-TCPブロックを対照群とした。それぞれをラットの皮下に移植し、移植後6週目、12週目に摘出して組織学的に観察した。分化誘導群ではβ-TCPブロック孔表面に骨形成が広範囲に認められ、新生骨の表面には骨芽細胞が単層に配列している像が認められた。破骨細胞はβ-TCPの表面に広範囲に分布しており、骨の表面にはみられなかった。植後12週目の新生骨は6週目よりも厚くなり、12週目においてはセメントラインも認められた。ブロック孔には結合組織と多数の毛細血管も認められた。一方非誘導群では、ブロック孔表面に骨髄細胞由来と思われる細胞塊が認められるものの骨芽細胞ではなく、骨形成はわずかにみられるのみであった。対照群ではブロック孔表面には細胞成分はほとんどなく、骨の形成は認められなかった。非誘導群、対照群においても破骨細胞がβ-TCPの表面に認められたが、分化誘導群に比べて少数であった。これらの結果から、骨芽細胞様細胞へ分化誘導した骨髄細胞と多孔性β-TCPブロックとの複合体は異所性に活発な骨形成能をもつ一方、未分化な骨髄細胞とβ-TCPの複合体はほとんど骨形成能を持たないことが明らかとなった。in vitroで骨芽細胞様細胞に分化した骨髄細胞が骨形成および破骨細胞の誘導に重要な役割を果たしていると考えられ、β-TCPとの複合体は将来的に広範囲な顎骨欠損の再建材料として使用できうる性質を兼ね備えていると推測された。