Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、舌苔と喫煙等の生活習慣およびストレス、倦怠感等の自覚症状との関連性について科学的に実証し、最終的には歯科健診時の保健指導に応用できるようにすることを目的にした。本年度は、デジタルカメラで陸上自衛隊員男性212名の舌写真を撮影した。質問紙は、生活習慣として、口腔衛生状況、飲食の習慣、喫煙、消化器症状の22項目、全身疾患の18項目を内容に含めた。舌苔の色や厚さは、パソコンの液晶画面上で観察した。舌苔の色は、1(白)あるいは2(黄あるいは茶)にスコア化した。舌を9に区分し、それぞれのセクションの厚さを0から2の範囲でスコア化した(0=苔なし、1=薄い苔、2=厚い苔)。Thickness Score(TS)として、全てのセクションのスコアの合計を算出した。舌の色や厚さと生活習慣、自覚症状、全身疾患との関連性は、カイ二乗検定あるいはフィッシャーの直接法を使用した。TSと消化器症状および全身疾患の合計項目数との関連性は、スピアマンの順位相関を使用した。分析の結果、色に有意な要因であったのは、コーヒーを飲む習慣、全身疾患が有り、高血圧、胃腸疾患であった。厚さに有意な要因は、消化器症状の有り、胸焼けであった。TSは、消化器症状の合計項目数と有意に関連していた。年齢は、舌苔の色と厚さに有意な要因ではなかった。以上より、舌苔の色と厚さは、生活習慣、消化器症状、全身疾患との関連性が認められた。舌苔の色や厚さによって特定の病名を確定することは困難なことではあるが、舌苔を受診者とのコミュニケーションや歯科保健指導に利用することが期待できる。しかしながら、今後舌苔と生活習慣、全身疾患との関連性のデータベースを構築し、生活習慣指導前後の舌苔の変化を検証し、舌苔との因果関係を検討する必要がある。