Outline of Annual Research Achievements |
新潟県の里山に自生するクロモジやタムシバなどの精油含有樹木類、草本類ならびに木質バイオマス利用の一環として杉間伐材からの木質ペレット製造時に生産される杉オガ粉を再生可能地場資源と捉え、国産和精油製造の可能性を検討するため、また、季節的な精油含量や香気成分に関する基礎的知見を得ることを目的として検討を行った。 実験に用いた精油樹木、草本類は新潟県阿賀町役場、両鹿瀬森林生産組合の承認のもと、阿賀町町内で採取収集したものを使用した。精油蒸留はガラス製2Lまたはステンレス製36L水蒸気蒸留装置を使用して行った。香気成分の分析はDB-Waxカラムを用いたガスクロマトグラフィー(GC)法で分析した。 その結果、当地のクスノキ科クロモジLindera umbellataからは1.5Kgの枝葉から7.9g(Y=0.53%)の精油が得られ、GCによる香気成分分析の結果、ラベンダー精油の主成分であるリナロール(27~61%)を主成分とするが、部位、採取時期による変動が大きい。さらに5月の花期のリモネン、葉部の1, 8-シネオール、落葉期の枝部の酢酸ゲラニルなど採取時期により特徴的な成分変動が認められた。 この他、当地に自生するモクレン科タムシバMagnolia salicifolia、ヒノキ科スギCryptomeria japonica、アスナロThujopsis dolabrata、マツ科キタゴヨウPinus. p var. pentaphylla、モミ、イチイ科カヤTorreya nucifera(当地は低木性のチャボガヤ、ハイイヌガヤ)、シソ科ナギナタコウジュElsholtzia ciliata、ミカン科のキハダPhellodendron amurense未熟果実についても蒸留を行い、精油を得ることができた。また、それぞれの香気成分の分析も行い含有成分の同定、組成の変化についても検討を行った。 以上のように、当地の里山に自生生育する植物からの精油蒸留の結果から、産地の明らかな国産和精油の製造は十分可能であると考える。 しかしながら、今回の結果から精油成分は採取時期、部位によりかなり異なることが明らかとなった。採取時期、部位ごとに異なる特徴を持った精油として商品化することも考えられるが、それには製造ロットごとの分析が必要となる。
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