Outline of Annual Research Achievements |
1. 研究の背景, 目的 本校では, 工学系4学科を横断して各専門における基礎的技術を習得する実験授業を1年次に開講してきた. 自身の専門と異なる分野に興味がない学生が少なからずいることが課題とされてきた. 改善策を検討する中で, 本校で開発された「スマートデバイスを用いるフッ化物イオンの簡易計測法」に着目した. 学生が慣れ親しんだタブレット端末を活用することから, 専門にかかわらず化学への興味を喚起する学生実験への展開を着想した. 分析対象は, 学生が身の回りの物事と結びつけやすいpHに変更した. 本研究では, タブレット端末を分析装置として用いるpH簡易測定法を開発した. そして, この装置を本校1年次の学生実験で試用した. 2. 開発したpH簡易分析装置の概要 本装置は, タブレット端末, 解析ソフト, 外光の影響を抑える試料ホルダからなる. 本装置による分析は, まず, pH指示薬により呈色した液体試料を端末のカメラで撮影する. 次いで, 撮影した標準試料の画像から色相値などの色情報を読み取って校正曲線を生成する. そして, 実試料の色相値からpH値を自動的に算出する. 試料に添加するpH広域指示薬は新規に開発し, 指示薬6種をエタノールおよび中性リン酸塩緩衝液混合溶液に溶解して調製した. 3. 本装置によるpH値測定 標準試料として, 種々のpHに調製した緩衝液について色相値を測定した. pH1からpH13の領域にわたって最大±pH0.05程度の正確さでpH値解析が可能であった. また, 希酢酸および重曹水を実試料としてpH値を測定する学生実験を行った. 系統誤差pH0.1程度の正確さで各試料のpH値を分析した. 学生からは「pHメーターよりも素早く簡単にpHを調べることができて凄いと思った」といった感想が寄せられた. 4. 研究の成果 タブレット端末を分析装置として用いるpH簡易測定法を開発し, 広範囲にわたるpH値を十分な正確さで測定した.
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