Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 分娩後の子宮回復には子牛の吸乳刺激により促進されるオキシトシンの分泌が重要であるが、吸乳刺激が長期間続くと卵巣機能回復が遅れる(Forrest et al. 1980)ことが知られている。そこで本研究では宮崎大学住吉フィールドで飼養されている黒毛和種繁殖牛について、母牛の母乳成分、血液成分、繁殖機能回復と、哺乳子牛の成長との関係を詳細に調査し、仔牛の成長率と母牛の繁殖性との関係を調べた。 【方法】 黒毛和種繁殖牛17頭を供試牛として用いた。分娩後毎週(1~7週)毎の親子の体重測定と超音波による母牛の子宮角直径測定と卵巣動態の記録を行った。分娩後1, 3, 5, 7週に母牛の採血と搾乳を行った。今回は卵巣機能回復の速さを繁殖性の良し悪しの判断材料とした。分娩後の卵巣機能回復が平均(分娩後6.3週)より遅い群(L群 : n=11)と短い群(E群 : n=6)に分けた。 【結果】 仔牛の成長率(生時~7週までのD. G.)はL群の仔牛(0.63)がE群の仔牛(0.49)より有意に高かった(P<0.05)。子宮角の回復はL群(2.9週)がE群(3.7週)より早い傾向にあった(P<0.1)。乳中尿素窒素(MUN)は分娩後1, 3週でL群がE群より有意に高く(1週 : L群16.3mg/dL、E群12.4mg/dL 3週 : L群21.8mg/dL、E群12.0mg/dL)(P<0.01)、5週(L群16.9mg/dL、E群12.6mg/dL)では高い傾向にあった(P<0.1)。血漿中プロジェステロン濃度は分娩後7週でE群(5.7ng/mL)がL群(0.5ng/mL)より高かった(P<0.01)。 【まとめ】 これらの結果から仔牛の成長率の良い母牛は繁殖性の回復が遅くなる可能性が示唆された。反対に子宮角の回復は早い傾向にあったことから、成長率の良い仔牛は、母牛から多くの母乳を長く吸乳していた可能性がある。またL群のMUNが分娩後5週まで高かったことからMUNの高値も卵巣機能回復に悪影響を及ぼしたのかもしれない。
|