Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 感染症治療において解決されない問題に、多剤耐性菌による感染症がある。S. maltophilia(マルトフィリア)による感染症もその1つであり、現在使用可能な治療薬はスルファメトキサゾール(以下、SMX)/トリメトプリム(以下、TMP)合剤、レボフロキサシン、ミノマイシンに限られ、第一選択薬であるSMX/TMPは有効性が示されているものの、一定の確率で肝・腎障害や血液毒性などの致死的な副作用の出現が臨床上問題になっている。SMX/TMPは代謝・排泄に肝・腎両方が関与するが、有効血中濃度域や副作用発現濃度域は明らかにされておらず、さらに臓器不全を呈している患者に使用されることが多い一方で、臓器障害時の減量基準は明確にされていない。一方、腎不全患者では血液浄化療法を施行しながらSMX/TMPを使用する場合がある。この場合、血液浄化療法による薬物除去の情報はほとんどなく、臨床症状を観察しながらの投与量調節では後手となり、投与量が不十分であれば治療失敗、過量投与となれば致死的となり、いずれにしても死亡につながる。そこで我々はマルトフィリア感染症において、SMX/TMPの有効血中濃度域および投与方法を確立し、多臓器不全時においても抗菌薬の血中濃度制御を行うことが、さらなる有効性および安全性の向上に寄与すると考えている。以上より、抗菌薬の測定系を開発することを目的とした。 ○研究方法 ・測定系の確立 既報を基に当院で測定可能なHPLCによる条件を検討した。対象薬物は第一選択薬であるSMX, TMP, 内標準物質としてプリミドン(PRM)を選択した。 ○研究成果 SMXに関しては保持時間が8.9分で検出可能となった。しかしTMP, PRMに関しては同一の測定系では臨床上得られる濃度に対して十分な検出感度を得ることができなかった。臨床検体中の薬物濃度をHPLCで同時測定するには感度の点から限界があり、LC/MS等での測定方法の確立が必要と考えられた。
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