Project/Area Number |
16H06283
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Research Category |
Grant-in-Aid for Specially Promoted Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Humanities and Social Sciences
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松沢 哲郎 京都大学, 高等研究院, 特別教授 (60111986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真也 京都大学, 高等研究院, 准教授 (40585767)
林 美里 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (50444493)
平田 聡 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80396225)
足立 幾磨 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80543214)
森村 成樹 京都大学, 野生動物研究センター, 特定准教授 (90396226)
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Project Period (FY) |
2016-04-26 – 2021-03-31
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Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2019)
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Budget Amount *help |
¥469,560,000 (Direct Cost: ¥361,200,000、Indirect Cost: ¥108,360,000)
Fiscal Year 2019: ¥86,320,000 (Direct Cost: ¥66,400,000、Indirect Cost: ¥19,920,000)
Fiscal Year 2018: ¥104,000,000 (Direct Cost: ¥80,000,000、Indirect Cost: ¥24,000,000)
Fiscal Year 2017: ¥104,000,000 (Direct Cost: ¥80,000,000、Indirect Cost: ¥24,000,000)
Fiscal Year 2016: ¥104,000,000 (Direct Cost: ¥80,000,000、Indirect Cost: ¥24,000,000)
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Keywords | 比較認知科学 / 言語 / 利他性 / 生涯発達 / チンパンジー / 霊長類 / 類人猿 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、言語と利他性が人間の子育てや教育や社会といった本性の理解に不可欠だという視点から、①人間にとって最も近縁なチンパンジー属2種(チンパンジーとボノボ)とその外群としてのオランウータン、さらにその外群としての他の霊長類や哺乳類を研究対象に、②野外研究と実験研究を組み合わせ、③認知機能とその発達や社会的知性に焦点をあてることで、人間の本性の進化的起源を明らかにすることを目的とした。チンパンジーの野外研究はギニア、ボノボの野外研究はコンゴ、実験研究は霊長類研究所と熊本サンクチュアリで実施した。進化的基盤を探る外群としてオランウータン、キンシコウ、ニホンザル、ウマ、イヌを対象として、彼らの暮らしと知性の研究を推進した。チンパンジーの数字系列0から35までの理解と瞬間記憶を調べた。「言語と記憶のトレードオフ仮説」の検証である。アイトラッカーによる視線記録で誤信念理解について検証したところ、チンパンジーとボノボが自己の経験に基づいて他者の視点を理解し心的状態を推論していることが示唆された。なお霊長類研究所と熊本サンクチュアリで個体交換するチンパンジーの群れづくり構想は、諸般の事情で中断延期することになった。野外研究では、撮りためた30余年間のビデオ・アーカイブを利用し、AIの深層学習を使って、自動的に顔画像を取り出し個体識別して社会ネットワークを解析する研究成果を公表した。オランウータンでは、ボルネオでの野外調査とマレー半島の施設での認知発達研究の継続を図った。雲南のキンシコウ調査と妙高高原笹ヶ峰のニホンザル調査を進め、ウマではスペインとモンゴルと都井岬の3調査地で野生や遊牧のウマの調査をおこなった。なお研究成果を『心の進化を語ろう:比較認知科学からの人間探求』(岩波書店)にまとめた。人間の知性や利他性の霊長類的基盤を探るとともに、そのさらに哺乳類的基盤を探る研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験室での認知研究、野外での観察研究の順に述べる。チンパンジーでは、0から35までの数字の系列学習と瞬間記憶を調べた。「言語と記憶のトレードオフ仮説」の検証である。ヒトとチンパンジーやオランウータンなどの大型類人猿の認知発達について、色や形の異なる積木を二次元平面上に自由配置する課題場面で、チンパンジーとヒトの子どもに見られた自発的な分類行動と、4歳半以降のヒトの子どもに特有の行為の文法と呼べるルールの複雑化について考察を進めた。同時に、認知発達の基盤となる母子関係についても考察した。アイトラッカーによる視線記録を用いた新機軸の手法により、類人猿の誤信念理解について検証したところ、類人猿が自己の経験に基づいて他者の視点を理解し心的状態を推論していることが示唆された。チンパンジーとボノボの双方を対象に、オキシトシンのネブライザー投与に成功し、投与による社会的認知の変化を調べた。アイコンタクトがボノボでは増え、チンパンジーでは減るという結果を得た。野外研究では、30余年間撮りためたビデオ・アーカイブの整理を進めた。AIの深層学習を使って、ビデオから自動的に顔画像を取り出し、個体識別し社会ネットワークを解析する共同研究等を公表した。ドローン固定翼機をもちいて、ギニアのボッソウ村と世界自然遺産ニンバ山の間のサバンナに点在する森林量を測定し、野外研究の基盤となる保全・森林管理・野火監視技術を構築しつつある。他の霊長類として、ボルネオで野生オランウータン、雲南で野生キンシコウの調査をおこない、妙高高原笹ヶ峰の野生ニホンザル調査では標高1300mで越冬するサルの群れを発見し厳冬期の暮らしの一端を解明した。ウマについては、スペインとモンゴルと都井岬の3調査地で野生や遊牧のウマの調査を実施した。ウマについての研究論文が多数産出され、「ウマの世界」に関する特集号を『生物の科学』誌で出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験室の認知研究、野外の観察研究の順に述べる。認知研究では、まずチンパンジーの1個体場面で、言語の認知的基盤の解明に向けて、数字の記憶、感覚間一致、対象操作や道具使用にみられる行為の文法、情動の認知、他者の心を理解する心などの検討を継続しておこなう。タッチパネル課題、対面検査、アイトラッカーによる視線検出などの技法を併用する。利他的行動や、共感の基礎にある行動同期現象の研究を継続する。比較認知科学実験大型ケージ施設を活用した社会的知性の研究を、チンパンジーの群れづくりとからめて推進する構想を再構築する。野外研究では、撮りためた30年間の行動変化を追跡するビデオ・アーカイブ化の作業を進める。AIを利用した大規模データの顔識別手法の開発を基礎に、ビデオに記録された音声データも活用する手法を開発する。ボノボでは野外調査を継続する予定で渡航の機会をうかがう。人間の本性の哺乳類的起源を探るためのウマ研究を、野外(ポルトガルのアルガ山)と飼育施設(国内)で推進する体制を強固にし、ドローンを活用した空からの解析を進める。さらにはイヌについても実験研究と野外研究を進める。足立と林は霊長類研究所の担当で、平田と山本と森村は熊本サンクチュアリの担当である。ウマは平田・山本で共同する。ウマやイヌやスナメリといった霊長類以外の哺乳類や、さらにはカラスといった鳥類までを含めた比較認知科学研究を、研究分担者と研究協力者で推進する。外国人共同研究者(オックスフォード大学のドラ・ビロやスザーナ・カルバーリョほか)と共同しておこなう。ただし令和2年初頭からのコロナ禍で野外研究が止まり、かつ実験研究も施設がロックダウンされてまだ再開の見込みがない。諸般の事情で経費使用についても留保されている。したがって当面はこれまで取りためてきたデータの解析と、AIを利用した解析の推進と、研究論文等の執筆に注力したい。
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Assessment Rating |
Result (Rating)
A: Progress in the research is steadily towards the initial goal. Expected research results are expected.
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