Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
卵巣癌は婦人科悪性腫瘍において最も予後不良である。その主な 2 つの原因は早期発見法が未確立であることと、腹膜播種等を伴う進行卵巣癌は手術や化学療法を実施してもその大半が再発し致命的となるからである。本研究の目的は進行・再発卵巣癌の生物学的特徴をマイクロ RNA を介して読み解くものであり、再発率が低く多くが治癒しうる早期癌(一期)と高頻度で再発し予後不良である進行癌(二期から四期)の比較検討を行った。近年、あらゆる生物学的機能を制御しうるマイクロ RNA が癌細胞などから体液中に放出され、エクソソームに内包されることで安定して体内を循環することが報告され、重要な生体内情報伝達物質として注目されている。本検討は癌組織を用いて行う計画であったが、将来的に有用な血清中バイオマーカーとなる可能性もふまえて、患者血清を用いて研究した。今回焦点を当てた miR-99a は、卵巣癌細胞株 HeyA8、TYK-nu および不死化した正常卵巣表層上皮細胞 IOSE を in vitro で培養し、それぞれの細胞培養上清からエクソソームを回収し、その中の Exosomal RNA をマイクロアレイにて網羅的解析を行い同定した。58 名の卵巣癌患者と 12 名の健常女性の血清中を miRNA qRT-PCR にて miR-99a 発現を比較したところ、卵巣癌患者では有意に上昇していた (3.55 倍、p=0.0006)。ROC 曲線では AUC 0.82、感度 60%、特異度 84% であった。一期卵巣癌 (n=26) では健常女性の 2.64 倍、二期から四期卵巣癌 (n=32) では健常女性の 4.55 倍、であり、今回のサンプル数では有意差はないものの、発現量は病勢を反映する傾向を認めた。我々は miR-99a が卵巣癌の進行期と関連し、新たな血清バイオマーカーとなる可能性を同定した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。