Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
褐色腐朽菌と呼ばれる木材腐朽菌の一群は、我が国の木造建築物に被害を及ぼす主要な生物である。褐色腐朽菌は、木材中のセルロースおよびヘミセルロースを完全分解することができるにもかかわらず、他の糸状菌が有するセルロース分解に不可欠な酵素および酵素をセルロースに吸着させるための構造(CBM1: Family 1 Carbohydrate Bindng Module)をもたないことが明らかとなっている。そのため、褐色腐朽菌は酵素を用いた分解だけでなく、鉄と過酸化水素の化学反応(フェントン反応)によって生成するヒドロキシラジカルを利用してセルロースを分解しているという説が提唱している。しかしながら、報告者はこれまでに、褐色腐朽菌Gloeophyllum trabeum由来の溶解性多糖モノオキシゲナーゼのC末端に天然の結晶性セルロースに特異的に吸着する新規のドメイン(GtCBD: Cellulose Binding Domain)が付加することを明らかにした。そこで本年度では、GtCBDの実際の植物細胞壁に対する吸着特性を明らかにした。その結果、GtCBDは柔細胞の壁孔、仮道管の壁孔、複合細胞間層、放射柔細胞の細胞壁に吸着する様子が観察された。柔細胞や仮道管の壁孔に吸着したのは、壁孔膜の中でも純粋なセルロースミクロフィブリルから成るマルゴに吸着したためだと考えられる。また、複合細胞間層および一次壁のみから成る放射柔細胞の細胞壁に吸着した結果から、GtCBDは一次壁に特異的に吸着することが強く示唆された。GtCBDのN末端の溶解性多糖モノオキシゲナーゼはセルロースおよびキシログルカンに対して活性を有することから、GtCBDがキシログルカンおよびセルロースが存在する一次壁に局在することは、分解を効率良く進める上で合理的であると考えられる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Appl. Environ. Microbiol.
Volume: 82 Issue: 22 Pages: 6557-6572
10.1128/aem.01768-16