Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
Dipeptidyl peptidase-4(DPP-4)阻害薬は糖尿病治療薬として臨床で使用されている薬剤だが、最近AKIおよびCKD動物実験モデルに対して腎保護効果が報告されている。しかしながら、DPP4阻害薬がAKI後CKD/線維化に与える影響については今までに報告がない。そこで、AKI後線維化に対するDPP-4阻害薬の効果を検証した。まず、AKI後CKD/線維化を起こすモデルの作成を行った。安定してAKIを誘発できる酢酸ウラニウムにて回復期の線維化の評価を行ったところ、投与2週間から2ヶ月までは線維化を残すものの、線維化は徐々に退縮し6ヶ月までに消失することがわかった。次に、AKI後CKD/線維化を生じると報告されているアリストロキア酸を用いて、AKI後CKDモデルを確立した。確立したアリストロキア酸腎症モデルに対して、複数のDPP-4阻害薬を投与したが、今回実施できた投与量では明らかな急性期および慢性期の腎保護効果は得られなかった。次にシスプラチン腎症に対するDPP-4阻害薬の効果を検証したところ、あるDPP-4阻害薬はシスプラチン腎症の急性期腎障害を軽減し、障害ピークでのアポトーシスの減少を認めた。また、AKIを軽減することで投与14日目の腎機能障害を軽減し、投与14日目の線維化および尿細管障害マーカーのKidney Injury Molecule-1(KIM-1)の発現を減少させた。腎障害出現後のDPP4阻害薬投与は腎機能障害のピークを軽減することはできなかったが、腎機能障害の回復を早め、投与14日目のアポトーシス細胞、線維化、KIM-1発現を減少させた。以上のことからDPP-4阻害薬はシスプラチン腎症に対するAKIおよびその後の線維化を軽減する可能性が示唆された。