Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
当初の計画に基づき、既に乾癬のモデルマウスとして確立されているK5.Stat3c遺伝子改変マウスを用いて実験を開始した。K5.Stat3cマウスでは1日おきに12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate(TPA)を2回塗布することで比較的速やかに、病理組織学的に好中球の浸潤を伴う乾癬類似の病変を生じる。そこで遺伝子改変を受けていない野生型マウスとK5.Stat3cマウスの両側耳介に初日と3日目にTPAを塗布した。その間連日、右耳介には好中球エラスターゼ阻害薬をアセトンに溶解したものを塗布、左耳介には対照コントロールとしてアセトンを塗布した。野生型マウスは3匹とも右耳介に0.5%濃度の好中球エラスターゼ阻害薬を塗布、K5.Stat3cマウスについては0.01%、0.1%、0.5%濃度の好中球エラスターゼ阻害薬を3匹ずつに塗布した。連日耳介の厚さを測定し、4日目にダーモスコピーを用いて写真撮影を行った後、サンプリングして病理組織学的な検討を行った。ダーモスコピーで観察を行うと、野生型マウスではTPAを塗布しても大きな変化はみられなかったが、K5.Stat3cマウスでは乾癬に類似した鱗屑と耳介の腫脹が生じていた。一方、TPAに加えて0.1%の好中球エラスターゼ阻害薬を塗布した群では明らかに鱗屑が減少していた。耳介の厚さを経時的に測定すると、野生型マウスでは有意な耳介肥厚はみられなかったが、遺伝子改変マウスでは徐々に耳介が肥厚した。0.1%および0.5%の好中球エラスターゼ阻害薬を塗布した2群では、耳介の肥厚が抑制された。また病理学的には真皮への炎症細胞浸潤が軽減する傾向がみられた。