Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
歯が喪失した結果生じる顎堤吸収は,その後のインプラント治療や歯科補綴処置を困難にする.機能的かつ審美的なインプラント治療を実現するためには,自家骨を用いた骨移植や骨補填材を用いた骨増生術などの再生治療が多く行われるようになった.本研究の目的は,Id2ノックアウトマウスから樹立したiPS細胞を用いて骨芽細胞への分化誘導モデルを作製しBMP誘導性の骨芽細胞分化におけるId2の役割を明らかにし,BMPの機能を向上する技術を開発することである.これまでに申請者は,Id2ノックアウトマウスから作製したiPS細胞が,野生型マウスから作製したiPS細胞と比較して,有意に骨芽細胞特異的遺伝子の発現を亢進していることを明らかにしている.平成28年度は,Id2遺伝子がどのように骨芽細胞分化促進に関与しているかを検討するため,Id2ノックアウトマウスから作製したiPS細胞を用いて,BMP-2添加による骨芽細胞分化に関与しているシグナル伝達経路をリアルタイムRT-PCRおよびリアルタイムRT-PCRアレイ解析を用いて遺伝子発現を確認した.その結果,Id2遺伝子欠失による骨芽細胞分化促進は,Osterix,Msx2,Dlx5の転写因子の発現に対して抑制的に作用することによって,Wntシグナル伝達機構が活性化された結果引き起こされている可能性が示唆された.今後,Id2に関与するこれらの分子を標的とすることで,BMPの機能を向上する技術に繋げていくことが期待される.