Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
骨格性下顎前突症の原因遺伝子の追求をマイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイド関連解析という手法で行ってきた。すでに23465個のマーカーから第1、第2スクリーニングを経て、36個の候補マーカーに絞り込んでいた。その中で第一染色体の5つのマーカーはindividual typingが終了しており、1p22.3、1p32.2が関連を認めている。今年度は、第一染色体以外のIndividual typingを行い、3q23(9.24E-04)、6q23.2(6.61E-04)、D7S0133i(8.45E-04)、D15S0154i(5.71E-05)という結果が得られ、4つの領域で新たに関連が示唆された。このうち第3染色体と第6染色体については過去の報告と近い領域を示した。骨格性不正咬合の重篤なものは顎変形症(日本人約1/80人)と分類される。そのなかでも多くを占めるのが下顎骨の過大による骨格性反対咬合である。学童期に骨格性下顎前突症(反対咬合)を呈した患者を一度歯科矯正単独治療(健康保険適応外で自費診療、約50万円)で数年にわたり長期間、成長のコントロールを行うという治療をしても、その後の思春期成長後期で下顎が過大に成長することで、再発し顎変形症となる患者も多く、手術を伴う矯正治療(保険適応)で再治療となってしまうこともある。学童期および思春期に患者が苦痛に耐え、長期間協力的に治療に参加してさえもそうなることが起こりえるのである。この不必要な成長のコントロールや外科手術を回避するというカスタムメード医療を可能とするためには、原因遺伝子の簡便な遺伝子診断の開発が必要と考えられるが、今回の結果がその一助になる可能性があると考えられる。