Research Abstract |
p53遺伝子治療とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤FK228との併用効果の検討 p53遺伝子治療の奏効率を高めるためには,p53依存性アポトーシス誘導に抵抗性の癌を克服する必要がある。最近,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI:histone deacetylase inhibitor)には細胞周期停止や細胞死誘導効果が報告されており,腫瘍細胞の増殖を抑制する新規の抗がん剤として注目されている。また,白血病などで第2相臨床試験が行われている天然化合物HDACIのFK228(depsipeptide)はCAR(coxsackievirus adenovirus receptor)の発現を増強させることによって,アデノウイルス感染を促進することが報告されている。 本研究では,腫瘍細胞の増殖抑制におけるFK228前処理とAd-p53遺伝子導入の相乗効果を,細胞レベルおよびマウスモデルで検討した。その結果,FK228前処理はCARの発現増強を介してAd-p53感染効率を2-5倍増加させることによって,癌細胞のアポトーシス誘導を増強した。また,FK228はp53タンパクのアセチル化も促進し,その結果Noxaの発現誘導を特異的に増加させた。さらに,FK228とAd-p53との併用は,Baxタンパクのミトコンドリアへの移行を促進した。アポトーシス誘導におけるFK228とAd-p53の相乗効果は,siRNAを用いたNoxaとBaxのノックダウンによって顕著に阻害された。ヌードマウスin vivo皮下移植モデルにおいて,p53遺伝子導入単独では増殖抑制の見られなかった癌細胞株においても,FK228との併用によってアポトーシスが誘導され,増殖抑制効果が認められた。本研究により,FK228はp53遺伝子治療との併用薬剤として有望と考えられる。
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