Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
低酸素反応性因子の1つのサブタイプであるHIF-2αの新たな機序を解明する目的で、酵母Two Hybrid法を用いた解析を行った結果、昨年はヒト心臓のcDNAライブラリーからマウス乳癌を惹起するといわれるMouse mammalian tumor virus(MMTV)のintegration siteの6番目に当たる位置をcodeしているInt6を同定した。この因子は翻訳調節を行うeIF3eとしても知られ、その乳癌の癌化に関する役割が注目されていた。本研究にてこの因子は、(1)HIF2の蛋白発現を負に調節する制御因子であること、(2)MMTVにより発現される恒常不活化型変異体Int6-ΔCは、HIF-2αの発現安定化および転写活性を上昇させること、(3)Int6のベクター型siRNAをマウス皮下に遺伝子導入したところ、正常血管の新生が惹起されること、(4)8例の乳癌サンプルからmRNAを調整しRT-PCRにてInt6のmRNA発現を見たところ、8例中7例に著明な低下が認められた。これらの結果からInt6は乳癌の癌遺伝子として低酸素反応性因子HIF-2αの直接調節因子として重要であるばかりではなく、癌化や悪性度、転移などに関わる血管新生に必須な因子であることが明らかとなってきた。Int6のsiRNAを用いた予備的なDNAアレイによる解析では、血管新生因子群の特異的な上昇パターンが認められ、Int6はいわば血管新生のマスタースイッチの一つである可能性が出てきた。今後は、さらに詳細な検討を行い、血管新生の機序を解析するとともに、Int6のsiRNAの臨床医薬としての開発も同時に進める予定である。
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