Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
本研究は、癌免疫療法において癌細胞の排除に中心的な役割を果たす免疫担当細胞を薬物として捉え、それら細胞の体内動態を制御し、標的組織へ効率よくターゲティングすることによる効果的な癌免疫療法を達成するためのDDSを確立しようとするものである。本年度は、(1)腫瘍内環境変化による抗腫瘍免疫細胞の腫瘍内浸潤促進と抗腫瘍効果、(2)養子免疫療法における免疫系細胞の体内動態制御の開発、(3)腫瘍組織移行性に優れた免疫系細胞の創製について検討した。(1)各種サイトカインを発現させた樹状細胞(DC)の中でLIGHT発現DCは、腫瘍細胞に対する傷害活性、抗原食食能、T細胞増殖刺激能、腫瘍部位から所属リンパ節への遊走能、腫瘍特異的CTL誘導能、腫瘍部位へのリンパ球浸潤能に優れており、腫瘍内環境を変化させることにより高い抗腫瘍効果が得られることを明らかにした。(2)細胞傷害性T細胞(CTL)表面に高発現するケモカイン・レセプター(CCR7)に対応するケモカイン(CCL19)を腫瘍に高発現させることで、移入したOT-1 CTLの腫瘍集積性向上に基づく、抗腫瘍効果を増強させることに成功した。また移入したCTLのより積極的な腫瘍への移行を目的に、レトロウイルスベクターを用いて作製したCCR4高発現CTLは、対応するケテカイン(CCL17)に対し遊走活性を示し、癌養子免疫療法の有効性を更に改善する可能性を示唆した。(3)腫瘍血管に特異的に発現している分子に対する一本鎖抗体(anti-flk1)をCTLに強制発現させて、CTLの腫瘍集積性の増強に基づく癌免疫療法の有効性改善を図った結果、この改変型CTLが腫瘍組織への集積性に優れるばかりでなく、腫瘍血管を正常血管と見分けて効率よく破壊した。即ち本手法は、癌細胞と腫瘍血管の両者を傷害することが可能であり、癌養子免疫療法における理想的な細胞医薬候補であることを見出した。
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