Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
強酸で処理されたカーボンナノチューブ(CNT)は水中で負の表面電位を持つ。そのCNT水分散液を2枚の平行平板ITO電極の間に注入して、直流電場を印加すると、CNTは陽極表面に向かって電気泳動する。最初は陽極面内で均一に分布していたCNTは、ある条件下では、局所的に集合してCNT濃度の差による幾何学的なパターンを作り出す。このパターンは電場が印加されているときのみ発現し、電場を消去するとCNTは拡散し、パターンは消滅する。このパターンを解析した結果、多角形のセルが現れる初期(セルパターン)と、セルの交点に向かってCNTが集合し、喋々のような形を作る後期(バタフライパターン)に大別できることがわかった。セルパターン発現には閾値電位が存在すること、および、セルの大きさが電位や電場に依存せず、電極間距離と同じであることにより、セルパターンはベナール対流の温度差を電場(電位)で置換したような現象であるといえる。ところで、電極を垂直に立てた場合(電場による作用と重力が直交した場合)、パターン全体が電極の中心点を基点として回転する現象が見られた。回転は等速回転運動である。また、その回転速度と回転方向は、2枚のITO電極をスペーサを介して固定しているクリップの垂線からの角度θに、sinθの関係で依存していることがわかった。これは重力、および、クリップによる何らかの物理量との外積に対応する新規な発見である。さらに、コンフォーカル・ラマン顕微鏡で陽極に垂直な方向にCNT特有のラマンピーク強度をマッピングすることで、電場が印加された状態での(陽極に垂直な)CNTの濃度分布を測定することができた。分解能をさらに向上させれば、パターンの3次元構造を明らかにすることができる。