Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2005: ¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
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Research Abstract |
臨床薬FK506より10倍強い免疫抑制作用を示すマイカラミドAは,天然界からの供給が極端に少ないことに加えその誘導体合成も殆んど行われていないため,次世代型の医薬品と期待されていながらもマイカラミド類のタンパク結合部位は未だに解明されていない。本研究では,マイカラミド類の合成にフィットした革新的な素反応を開発後,それらを巧みに組み込んだ緻密な合成デザインによりマイカラミド類の効率的な合成ルートを確立すると共に,タンパク結合部位の解明を通して生体内結合タンパクを絞込み,免疫抑制作用機序の解明を急ぐことを目的とする。本研究では,マイカラミドAの6位と7位とのカップリングによるコンバージェント合成をデザインした。効率性の観点から,ライトセグメントおよびレフトセグメントをそれぞれ安価なD-マンニトールから合成することにした。ライトセグメントは,分子間アルドール反応を鍵反応に利用して合成した。この際,Yb(OTf)_3とTMSCIを組み合わせることで,効率的にアルドール反応を行えることを見出し,実際に官能基を多数もつデリケートなアルドール生成物を良好な収率で得ることに成功した。さらに,Curtius転位反応や立体選択的なアリル化反応を利用することによりライトセグメントの合成を達成した。一方レフトセグメントは,効率良く合成した光学活性なオレフィンに対し,分子間シクロプロパネーション反応に続くワンポットδ-ラクトン合成法を適用して短行程で合成することを企画した。ジフェニルジセレニドと水素化ホウ素ナトリウムとからin situに生成するフェニルセレニドアニオンを利用することにより位置選択的なシクロプロパン環の開裂を行い,4位にフェニルセレノメチル基を有するδ-ラクトンの新規合成法を開発した。得られたδ-ラクトン中間体はトリフラートへ誘導後,Stilleカップリングを用いてビニルスズ中間体に導いた。次に両セグメントを用いるカップリング反応を検討した。その結果,TMEDA共存下にブチルリチウムでビニルアニオンを発生させる方法により,目的の立体化学を有する合成中間体が主成績体として得られ,数行程の変換後,マイカラミドAの不斉全合成を達成した。本マイカラミド合成は,原料の選択から全くのオリジナルとして開発されたものであり,さらに高立体選択的に効率的な合成がなされたことは,合成品のマイカラミドAの光学純度の高さからも窺える。本研究を通して,今後の天然物合成にも適応し得る有用な知見を数多く提示することが出来た。現在,合成したマイカラミドAの免疫抑制活性の再評価を依頼中である。
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