Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2006: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究ではSr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>やSrCu_2O_3等の梯子格子系銅酸化物のCu K吸収端共鳴非弾性X線散乱(RIXS)スペクトルを理論的に明らかにした.Sr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>における梯子方向(鎖方向)の光学伝導度において梯子及び鎖両方からの寄与としてスペクトルが現れ,そのx依存性が明らかにされている.光学伝導度は電子系の波数q=0の励起に対し,RIXSでは励起の波数qの依存性も見ることが可能であり,より明確に梯子格子系の電荷励起の様子を調べられる.これまでに理論及び実験的研究により,銅酸化物高温超伝導物質及び関連物質である一次元系銅酸化物のRIXSにおいて,Zhang-RiceバンドからCu上部Hubbardバンドへの励起に対応するスペクトルに特徴的な波数依存性を持つことが明らかになってきている.特に理論的には,二次元系では反強磁性のスピン相関とRIXSの波数依存性が関係し,一次元系ではスピン・電荷分離の特徴として捉えられることが分かってきた. 梯子格子のRIXSスペクトルの計算を,内殻ホールの軌道を含めた2x8サイトのHubbard ladder模型に対する数値的厳密対角化法を用いて行った.その結果,ホールを少量ドープした場合,RIXSスペクトルはほとんど変化せず絶縁体の波数依存性が残り,二次元系の場合と対照的であることが分かった.二次元系の場合はホールによって反強磁性に並んだスピン配置が急激に壊されるのに対し,梯子格子系では,それぞれの横桟で組んだスピン一重項状態が,ドープに対しそのまま残るためと考えられる. また、Cu L吸収端共鳴非弾性X線散乱では,そのX線の吸収・放出がCu 2p軌道と,調べたいCu 3d軌道との間の遷移により行われる.L吸収端非弾性散乱スペクトルの主なものは,始状態で3d(x2y2)に存在していたホールが,それ以外の3d軌道に移動する励起プロセスの,いわゆるd-d励起に起因したものである.その一方で,K吸収端非弾性散乱で見られていたような,ザン・ライス一重項バンドからCu上部ババードバンドへの励起(モットギャップ励起)も強度的には小さいが特徴的な波数依存性を持って存在すると考えられる.そこでd-d励起及びモットギャップ励起に起因したスペクトルがそれぞれどのような波数依存性で見られるかに注目した.簡単のためX線の偏光を面内のものに限定し,2バンドのババード模型にCu 2p軌道を加えた模型を用いてクラスター計算を行った.その結果,d-d励起よりもモットギャップ励起の方が波数に対する変化が大きいため,波数変化に対するスペクトル変化を調べることによりモットギャップ励起に起因したスペクトルがL吸収端非弾性散乱でも見いだせることが分かった.
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