Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
免疫監視機構が正常細胞の癌化をいかに察知するかという観点から、免疫寛容化が成立している生体の細胞に新たな自己抗原を発現させた場合、あるいは細胞の恒常性を失うような細胞増殖やストレスを加えた時、免疫担当細胞がどのような反応を起こすかの解析を行った。Keratin14プロモーターにより表皮ケラチノサイトにCreとエストロジェンレセプター融合タンパク質(Cre-ERT)を発現するマウス(K14-Cre-ERT)とCre依存的にβ-Galを発現するマウスを掛け合わせ、ハイドロキシタモキシフェン(Tx)投与によりケラチノサイトにβ-Galの発現誘導を行った。誘導2週間後、所属リンパ節でβ-Galが提示されていることを、β-Galを免疫して得たT細胞に対する抗原提示により確認した。しかし表皮に誘導したβ-Galに対する顕著な免疫応答は認められず、細胞浸潤による皮膚炎などは誘導後数ヶ月経ても認められなかった。このことは、皮膚において免疫監視機構を司ると考えられるランゲルハンス細胞は新たにケラチノサイトに発現した抗原を取り込みリンパ節に運ぶが、免疫応答を誘導しないことが分かった。表皮ケラチノサイトに発現しているNotch1分子を欠失させることにより、ケラチノサイトに異常増殖が誘導され皮膚癌が発症することが報告されている。そこで、Notch1 lox/loxマウスにK14-Cre-ERTを発現させ、表皮のケラチノサイト特異的にNotch1を欠失させた。誘導後1週間で表皮におけるNotch1の発現はタンパク質として検出できないレベルまで低下し、表皮の肥厚化が認められた。誘導2週後にランゲルハンス細胞のCD11cおよりMHC class IIの発現レベルの上昇が認められ、CD3陽性細胞の浸潤が見られた。β-Gal発現誘導マウスと掛け合わせ、β-Galの発現誘導とNotch1の欠失を同時に行うと、免疫応答の増強がみられたことより、ケラチノサイトに誘導された異常増殖あるいはストレスが自然免疫応答の引き金となり、β-Galに対する免疫応答を不応答から応答へ転換したことが示唆された。
All 2007
All Journal Article (1 results)
J. Immunol 178
Pages: 3067-3075